第6章 七海さん
本当に油断も隙もない無いんだから…
そう思いながら七海さんの腕を掴んで見上げ口を開く。
『座ってください』
「神楽さんの力はなんとなく理解しました。
あなたはまだ高校生だ。好きでもない異性にこんな事はしなくて良いんです」
『七海さんのことは大好きですから大丈夫です!』
「家族や友人に対する好意のことを言ってるのではありませ…っ!
琴音さん、何のつもりですか?」
七海さん、自分が怪我してるのに話長いとかダメでしょ…!
七海さんが何を言っても聞いてくれないであろうと判断した私は、置いてあったメスで自分の指を軽く切ると、溢れ出した血液を誘導して七海さんを椅子に固定する。
驚いて顔だけ振り向く七海さん。
おそらく七海さんが言おうとしていたことは、硝子さんに何十回も繰り返し言われ続けてきたことだろう。
でもそれって、私が異性として好きな人になら、良いってことだもんね
そう自分に言い聞かせながらも意を決して、驚く七海さんの頬に手を添え、顔を近付けながら瞼を閉じる。
七海さん、心配してくれたのにごめんなさい
自身の唇に、確かに一瞬だけ触れた柔らかな感触に瞼をゆっくり開く。
「神楽、さん?」
『さっきも言いましたけど…
七海さんのことは、大好きですから大丈夫です』