第6章 七海さん
『えっと……』
もしかして七海さんは、私の術式のこと知らないの、かな…
私の術式の詳細は、東京校を中心に活動する一級術師以上の方には伝わっているはずなのだけれど…
紛れもなく七海さんは一級術師なのに
それなのにどうして…
『わ、私の術式は…東京付近で活動する一級術師の方で共有されているはず、なんですけれど…何かの、手違い、ですかね?』
「…それは、五条さんと家入さんもご存知ということですか」.
『はい!そうです…ぁ…』
七海さんの言葉に出た"五条さん"という名前に、ピンと来て顔を見合わせる。
五条先生…!!
絶対!七海さんに言い忘れてる!
深く息を吐き出す七海さんも、同じく事情を察したようで、こめかみに手の甲を当てていた。
『五条先生、結構抜けてるとこありますよね…はは。
そ、そういう、わけで、私、少し反転術式使えるので…背中、向けてもらっても良いですか?』
「もうほとんど治っていますから大丈夫です。神楽さん、ありがとうございました」
『え?…いや!全然ダメですよ!
まだ5針は縫わなきゃいけないほどの傷です!』
丁寧にお礼を言いながら新しいシャツを着ようとする七海さん。
当然のようにそうする彼に一瞬、怪我の治療の事を忘れてしまっていたけれど、間一髪で着ようとしていたシャツを奪いとる。