第5章 夏油君と五条君
悟、明日って言った…
涼しい顔でさらりと言った悟の言葉を思い出しながら隣を歩く。
恥ずかしさでどうにかなりそうで、両手で顔を覆った。
「琴音、青い顔してっけど。なに?帰りたくねぇの?」
『へっ、ぁ……
あの、私の部屋の扉、悟が壊しちゃったから…ちょっと、心配だなぁって、ははは』
「あー、忘れてた。硝子いねぇし、おばさん(寮母さん)帰ったし…
とりあえず、風呂まで送るわ」
『…えっと』
1人で行けるよ、そう言おうとしたけれど…
彼の手が背中に添えられた事が嬉しくて、口を閉じた。
背の高い彼を見上げれば、ん?と優しく微笑む姿にきゅっと胸が締め付けられる。
今日の悟、優し、すぎない…?
『本当に、私のこと好きみたい』
あ、れ…
私!今、口に出して…!?
『あ!いや!今のは、その…』
「…信じてねぇの?」
『そんな、ことは……ひっ!?』
誰もいない廊下でそう言って立ち止まった彼は、ゆっくり私に歩み寄って壁に追い詰める。
私のばか!
また怒らせちゃった…よ…?
至近距離で私を見下ろしたかと思えば、次の瞬間にはスッとしゃがみ込んで片手で目元を覆った彼。
さと、る?
戸惑い、私も慌ててしゃがみ込むんで顔色を伺えば、
『悟?だ、大丈夫?』
「大丈夫じゃねぇ…」