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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第66章 I want to be scarlet ✳︎✳︎



またある日の事。

私は3ヶ月に一度の割合で訪れる単独任務の帰りで、まだ夜の賑わいで活気付く街中を歩いていた。
開いているお店は夜間も営業している食事処がやはり多い。

時刻は21時。小腹がすいている為、キュルと小さくお腹の虫が鳴る。

消化の良いうどんか蕎麦でも食べて帰ろうかな。
先日姉弟子——恋柱の甘露寺蜜璃さんと訪れた食事処で食べた肉うどんがとても美味しかったのを思い出すと、またお腹の虫が鳴る。今度は先程より大きい音だ。

よし、行こう。
確か23時まで開いていたはず。私は少し早歩きで目標の店に向かった。







「いただきます!」
両手を合わせ、割り箸をパチっと割り、まずはうどんの具であるお肉から手をつけ始めた。


このお店の肉うどんは酒、砂糖、みりん、醤油、生姜で味付けした牛肉の他に小口切りに切られた葱だけが乗せられた至って飾り気がない物。

宇髄さんが一目見れば確実に「地味だな」の4文字で評するだろう。だけどその分、おつゆの旨みが十分に感じられて私はとても気に入っている。


つるる……と滑らかで弾力がある麺をすすると、口内に広がるのはほっとする鰹(かつお)出汁。
ゆっくりと咀嚼して一本一本を細かく噛み砕き、そして喉の奥に飲み込んでいくと思い出すのは愛おしい恋人の顔。


『そういえばここ、杏寿郎さんと来た事ない…』

煉獄家と言う代々炎柱を多数輩出している——いわゆる良家出身の彼だけど、偉ぶっている所が全くない。
だからこのお店のような庶民的な場所にも興味を示す事が多い。


1人で食事するのは以前から好きだ。気心しれた友人、先輩や後輩と食事するのも勿論好き。
けれど、彼とお付き合いするようになってから1人で食事をする事が何だか少し寂しくなっている。

あの大きすぎる声量の「美味い!」を毎日当たり前のように聞いているからだろうか。


『今度一緒に行こうって誘ってみよう』
うどんを全て食べ終わった後はおつゆもゴク、ゴクとこれまた全て飲み干し、どんぶりを卓にゆっくり置く。


「ご馳走様でした」

両手を合わせて挨拶をした後は会計を済ませ、煉獄邸への家路を急ぐ。
帰宅して湯浴みをし、討伐報告書を書いた後は単独任務の疲れからか、夢も見ずに朝まで熟睡した。

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