第66章 I want to be scarlet ✳︎✳︎
カン———
次の日の早朝5時半。
煉獄邸の庭にて、私は朝稽古を杏寿郎さんとしていた。師範の彼は恋人の時のような甘さはゼロで厳しさ全開。当然手加減も一切なし。本気で私を倒そうと容赦なく攻めて来るのだ。
ガンッ! ガンッ! ——— ガンッ!!
彼の木刀から放たれる速く重い太刀が真上から、斜めから3回私を襲う。
『んっ……本当にこれで呼吸使ってないなんて信じられない』
手首の捻りも利用して木刀を振り、その太刀を全てひるがえした後は一度後方に飛び退く。
「炎の呼吸 —— 壱ノ型・不知火」
グッと腰を深く落とし、呼吸を炎に変え、炎を纏った木刀を真横に振った私は彼の間合いに入り込む。
「炎の呼吸 —— 弐ノ型・昇り炎天」
杏寿郎さんの木刀が上段から下段に円を描き、燃える輪で不知火を相殺した。
「参ノ型 —— 気炎万象」
「肆ノ型 —— 盛炎のうねり」
続けて参ノ型を放てば、肆ノ型で再び相殺される。
『結構呼吸の威力上がって来たのにな……』
先日階級も上から3番目の丙(ひのえ)まで上がったのだが、1番上の甲(きのえ)、そして柱の称号を持つ杏寿郎さんには全く及ばない。
その後も攻めては払い、受けては攻めを繰り返していたが、結局この日は彼の得意の型である伍ノ型に仕留められ、私の木刀が折れてしまった所で地稽古が終了。
それから道場に移動した私達は締めの腕相撲をやる。勝敗は400回中、0勝400敗で私の完敗。不甲斐ないにも程がある。