• テキストサイズ

炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第65章 年越しは3つの日輪と 〜another story〜✳︎✳︎



「そう言って頂けると私も凄く嬉しいです。これからも頑張って作りますね!」

「ああ、楽しみにしている」

彼が私の手をきゅっと握り直した。その仕草に胸が甘い音を立てる。本当に杏寿郎さんと結婚出来て良かった……。




「わあ……凄い人ですね。でもここまで来たからには俺、行きたいです!」

煉獄家の男性3人の中で、1番芯が強いのは実は千寿郎くんなのでは。時々そう感じる時があるのだけど、これがこの日確信に変わった。

「うむ、では千!行くか」
「はい、父上」

「先に行くぞ」と私達に声をかけ、2つの金色の頭は夜の神社の参道から溢れている人達にまぎれて、あっという間に見えなくなった。

「あ、追いかけないと。2人ともとても楽しそうですね。見てるだけで微笑ましくなっちゃいます」

ねえ、杏寿郎さん……?

彼の方を向いたその瞬間 ——私の唇を掠め取るような口付けが届いた。

それはほんの一瞬の出来事だった。だから夢なんじゃないかと私は思った。
けれど周囲にいる人達の小さなどよめきが少なからず自分の耳に届いたので、ああ現実なんだなあ……となんとか理解をした次第だ。

「…………」
「やはり妻になっても君の愛らしさは変わらんな!」

ポンと大きな右手が私の頭を撫でてくれた。彼を見上げると、そこには大好きな笑顔がある。

「あけましておめでとう七瀬。今年もよろしくな」
「…………!」

左耳に新年の挨拶と一緒に届いたのは小さな小さな口付けだった。

「ほら、俺達も行こう」
「……はい」

私、やっぱり一生杏寿郎さんには敵わないんだろうなあ。
再び彼の右手が私の左手にきゅっと絡む。

世界で1番大好きな旦那さんとずっとずっと仲良く過ごせますように。

そして彼の大切な家族であるお義父さんや千寿郎くんとも、今以上に心の距離を近づける事が出来ますように。

私はそんな思いを神様に誓おう、と胸に抱きながら杏寿郎さんと一緒に川越氷川神社への歩みを進めて行った。




















——— 1年後。

「兄上、そーっとですよ。そーっと」
「うむ……用心せねばな」

煉獄邸の和室にて、今小さな戦いが幕を明けようとしている。
杏寿郎と千寿郎はそれぞれが両手に抱えた宝物を、息を殺しながら敷かれた布団に下ろしていく最中である。


/ 1010ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp