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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第65章 年越しは3つの日輪と 〜another story〜✳︎✳︎





時刻は後15分で午前10時になる。

朝食を済ませ、露天風呂にも入った。再度出かける準備をしているのは、仲居さんが一度各部屋の清掃をしてくれる為だ。


「あっ、杏寿郎さん、ちょっとこれ……」
「ん?どうした」

昨日彼がつけたと言うしるしを姿見で確認した時の事だ。
背中の傷の中央辺りに、赤黒い火傷の痕が重なっている。大きさは梅干し一個分と言った所。

「随分しっかりつけたんですね。びっくりしました……」
「……言っただろう、君が俺の妻になった証だと」

直感でわかる。
いつも咲かせてくれる赤い花より、しぼむ時期が遅いだろうと。

「不都合だったか?」
「もう、その言い方は本当にずるいですよ」

“すまない”と私を優しい目で見てくれる彼には本当に敵わない。


まずは姿見に自分の顔を映して、化粧を施していく。

粉おしろい、彼から甲(きのえ)昇格祝いに貰った3色の目張り(=アイシャドウ)、曙色の紅を唇に塗った後は、浴衣から乾鮭色の着物に着がえる。

そして ———

「杏寿郎さん、お願いします」
昨日は自分で塗ったけど、今日は紅が入った容器を彼に2つ渡した。





「…………」
「…………」

最初に右手に紅を塗ってもらい、今は左手を塗って貰っている。
色は1日前と同じで、親指・中指・小指には緋色を。
人差し指・薬指には青柳色にした。

真剣な表情をして1つ1つ丁寧に塗ってくれる彼がたまらなくかっこいい。見ているだけでドキドキしてしまう。

「出来たぞ」
「ありがとうございます」

うーん、やっぱり私が塗るより綺麗だ。左指を5本共まっすぐと伸ばして待つ事少し。
紅の液が乾いたのを確認して、座卓の近くに置いてある風呂敷から桐箱を取り出す。


「せっかくなので、昨日買って頂いた簪をつけますね」

髪を手で纏めた後、簪で束が落ちないように固定する。
「どうですか?」と杏寿郎さんの方を向くと…ふわっと後ろから包み込まれた。

「よく似合っている。やはり君はとても綺麗だ」
「杏寿郎さんは本当に褒め上手ですよね」

「俺は思った事を言っているまでだぞ?」
「……ありがとうございます」


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