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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第65章 I want to be scarlet ✳︎✳︎



杏寿郎さんは2日後、金沢から無事に帰京。

お土産は加賀藩献上品だった歴史を持つ「長生殿」(ちょうせいでん)だ。森八と言う和菓子屋さんで売られているらしい。
これは口に入れるとさらりと溶ける、上品な口当たりが魅力の落雁の事。


昼食後にみんなで食べて舌鼓を打った後は、自室に帰って今夜の任務の準備に取り掛かる。

着物から隊服に着替えながら思い浮かぶのは、自分と師範である杏寿郎さんとの呼吸の違いだ。
男女差を理由にあげてしまうとどうしようもなくなるので、それは頭から追い出した。


経験値も断然彼が上だ。これも嘆いてもどうしようもない。
自分だけしか使えない技……呼吸でも考えてみようかな。


『この先、自分だけの型とか見つけたりしてな?』
以前の恋人にそう言われたのを思い出す。

隊服に着替え終わった私は文机の上に置いてある記録帳をぱらっとめくり、筆で思いつくままに言葉を書き始めた。














「わっ!びっくりした……」
私の背後から急に大きな腕が回され、記録帳に向いていた思考が一旦中断される。

後ろを振り向けば、その腕の主は杏寿郎さんだった。


「襖の外から何度声をかけても全く返事がなかったから心配したぞ。いざ入ってもまるで俺に気づかないから、こうするしかないと思ってな」

「……すみません。これが鬼殺だと私はもう生きてませんね」

「ははは!いかにも!」

ぽんぽんと頭を撫でた彼は笑顔を見せた後、私の肩に顎を乗せる。
とくん……と鼓動が柔らかく跳ねた。



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