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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第65章 年越しは3つの日輪と 〜another story〜✳︎✳︎



「でも……あなたと深く繋がりたいなって気持ちも……あります……」

「ほう、それは嬉しいな」
双眸を一度閉じた私は、ふうっと深呼吸を一回する。

「だから私を……杏寿郎さんの妻にして下さい」
「承知した」

私に届いたのは彼からの甘い口付けと、とても嬉しそうな笑顔だった。







「んっ……」

私の体勢はうつ伏せになり、その上から杏寿郎さんが覆い被さっている。背中の髪を横に流すと、彼の目の前に出て来るのは右上から左下に向かって斜め下に走る傷跡だ。

そこに複数回、ちりっとした痛みと一緒に、杏寿郎さんからの口付けが落ちる。


「今日も綺麗に咲いた」
「ありがとう……ございます」

直接は見えないけど、傷の近くに赤い鬱血痕がついたのは間違いない。

彼の気分が高まった時にしか咲かなかったそれは夫婦になってからと言う物、毎晩のように咲いている結晶だ。
だから薄い花から濃い花までたくさんの花々が私の背中に舞っている。


「七瀬……少しだけ我慢出来るか?」
「えっ、我慢ですか?」

「うむ、すぐ済むように励む」
「わかりました……」

何かを思いついたらしい杏寿郎さん。我慢と言う言葉を聞き、気持ちの準備をしていると訪れたのは、聞き慣れた呼吸音 ——


「えっ、やっ、あつっ……」

一瞬の出来事だった。
上にいる杏寿郎さんの体が熱くなったかと思うと、背中の中心部に火傷をした時のような……そんな痛みが訪れた。ちう、と唇で吸い上げると、彼がそこを撫でる。

「すまんな、もう終わったぞ」
「はい……」

何かが私の背中に刻まれたようだ。けれどそれが何なのかはまだよくわからない。
該当の箇所に口付けを幾度か落とし終わった彼に質問をする。

「あの……もしかして呼吸を使いました?」
「ご名答。流石だな、七瀬が俺の妻になったと言うしるしをつけた」

しるしか……。

「明日の朝、確認してみてくれ」

私の背中、どうなっているのかな。
でもきっとそれは甘くて熱い証だ。簪と同じで夫になった彼から妻になった私への贈り物なんだろう。



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