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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第65章 年越しは3つの日輪と 〜another story〜✳︎✳︎



「素敵ねぇ」
「あの美丈夫は役者さんだよ、絶対!」
「いいなあ、隣の奥さん羨ましい…」


夫になってますます男っぷりに磨きがかかった杏寿郎さんは、今日も女性陣からの注目をその身に受けている。
けれど、ふと聞こえた”奥さん”と言う言葉に思わず顔がにやけてしまった。

「私、妻に見えてるみたいです。良かったあ」
そんな本音がつい口をついて出た。

「当然だろう。君は俺の妻だからな!」
さも当たり前のように答えてくれる旦那さんが心の底から愛おしい。


蔵造りの店舗が両脇に建ち並ぶ中、彼が「ここだな」と声を出して立ち止まった。
お店の看板には「呉服屋 小紫」と書いてある。

「お店の名前、杏寿郎さんの誕辰色と同じですね」
「む?そうなのか?」

「はい」と頷く私を、きょとんとした表情で見た後に暖簾をくぐっていく彼。


店内に一歩入るとすぐにここが高級な品を取り扱っている店舗だとわかった。
素人目に見てもなんとなく把握出来るぐらい、仕立ての良い商品ばかり並んでいたからだ。

「杏寿郎さん、随分お高そうなお店ですけど良いんですか?」

「問題ない!と言うより、君が着ている着物もこう言っては何だが、上質な品だぞ」

そうなんじゃないかと何となく感じてはいたけど…実際に聞いてしまうと途端に背筋がピンと伸びる。

「高い品だから良いと言うわけでは決してないが、生涯の伴侶となった君にはやはりきちんとした物を…と思ってしまうんだ」

「ありがとうございます……」

煉獄家の一員になる。
これは私の想像以上に重かった。だから花嫁修行と称して、色々なお稽古事に通ったのだけど……

「茶道以外はなかなか苦労していたが、今となってはお墨付きを頂いている。やはり君は努力の人だな」

……だって杏寿郎さん自身が努力の人だもの。妻になる私が簡単に諦めたら、ダメだなと思ったんだよね。
先生達は全員厳しかったけど、それ以上に優しかった。それも頑張れた理由。


「わあ、この簪素敵です」

そこには色模様をあしらったとんぼ玉の玉簪が棚に並べてあった。
青、赤、黄色、緑、と様々な色の簪が置いてある中、目を引いたのはやはり ———

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