• テキストサイズ

炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第65章 年越しは3つの日輪と 〜another story〜✳︎✳︎



「七瀬です、入ってもよろしいですか?」
中から了承の返事が聞こえて来たので、静かに襖を開けた。

昼餉が終わり、食器を片付けていると杏寿郎さんから「後で自室に来て欲しい」と言われた。だからやって来たのだけど…



彼は文机の前に座って、今日の稽古内容を記していた。
手招きをされ、彼の右横に腰をおろすと、杏寿郎さんはにっこりとした笑顔を私に向けて来る。

「随分嬉しそうですね。どうしたんですか?」

「うむ!明日から皆で川越へ向かうぞ!」

「川越ですか?」

杏寿郎さんは私の方に手を伸ばした —— かと思うと、お団子に纏めていた玉簪をすっと引き抜く。
するとパサッと静かな音を立てて、両肩に髪が落ちる。

それから彼は私の髪を一房取ると、そこへそっと口づけを落とした。

くるんとした長いまつ毛は相変わらず毛束も多く、ほぉっと見惚れてしまう。

「短い時はあまりわからなかったが、君ははなかなか柔らかい髪質なのだな」

「そう、かもしれません……」
杏寿郎さんに体のどこかを触れられると、いつも高鳴る心臓。

今日もドク、ドク、と勢いよく跳ねているのを実感していると、顎を取られて優しい口付けが降って来た。

「簪を受け取ってもらえるだろうか」
もう一度私の髪に彼の唇が触れる。


『君の髪が俺より長くなったら、簪を贈りたい』

以前そう言われた事が脳内に蘇る。


そう。
私の髪は杏寿郎さんより長くなり、胸元まで伸びたのだ。

「………はい、喜んで。それから川越と言う事はもしかして?」

「ああ!昨年憎き鬼舞辻無惨を討伐し、長年の願いも成就した。俺達もこうして夫婦となった節目と言うのもある。どうだろう、君と父上と千寿郎、皆で時の鐘を撞き(つき)にいかないか?」











——— と言う事で、12月30日。4人で川越へとやって来た。

電車を降り、改札を抜けると久しぶりの光景が目の前に広がる。

「懐かしいな。数十年振りだ、ここへ来るのは」
私の右隣に立っている槇寿郎さんが目を細めて感慨深そうな様子で呟いた。

「俺は初めてです!凄く楽しみにしていたので嬉しいです」

槇寿郎さんの右隣で瞳を輝かせながら、興奮気味にしているのは千寿郎くん。

/ 1010ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp