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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第64章 白夜と極夜 〜another story〜 ✴︎✴︎



その夜 ———

任務から帰宅した七瀬の部屋を杏寿郎が訪ねる。

「お帰り、無事の帰宅何よりだ」
「ふふ、ありがとうございます……」

湯浴みを済ませ、夜着に着替えた七瀬は彼の広い胸にぎゅうっと抱きついた。

「どうした?何がおかしい?」
「いえ、杏寿郎さんにそう言って頂くのに大分慣れたなあと思って。以前は私が言う事が多かったので」


『所帯の話だよ』
この時、杏寿郎の脳内に昼間天元から言われた言葉が反芻した。


「七瀬は……」
「………どうしたんですか?」

「…………」
「…………」

「私はずっと一緒に過ごしたいなあって思ってますよ」
「よ、よも??」

互いの間に流れる沈黙を破ったのは問われた七瀬だった。

杏寿郎の心臓が珍しく早鐘を打ち出す。

七瀬と恋仲になってからと言う物、波長が合う事が格段に増えたのだが、今回はあまりにも頃合いが良すぎて卒倒する勢いだった為である。


「あれ?今夜はずっと一緒にいたいなあって意味で伝えたんですけど……」
「う、うむ。それは俺もなのだが……」

「……………」 『どうしたんだろう?』

小首をかしげる七瀬の表情を見た杏寿郎は決意を固めた。

「君の帰りを待つのはなかなか退屈だと気づいた!だから、俺は日中も夜も君と共に過ごしたい。この先もずっと」

「杏寿郎さん……」
目の前の恋人の双眸が潤んだ様子を見た彼は、その唇をそっと塞ぐ。


「でも、私で良いんですか?」

「無論。俺は君”が”良いし、君でないと駄目だ」

そして、杏寿郎は左目を塞いでいる眼帯をゆっくりと外す。

閉じられているそこはもう日輪が輝く事はないが、開かれている右目は以前と変わらず、暗い夜でも朝日のような光を携えている。

背伸びをして、ゆっくりと彼の両瞼に口付けた七瀬はこんな事を言った。

「杏寿郎さんの双眸、右は白夜で左は極夜ですね」

「びゃくやときょくや……か?」

「はい……えーと………」

白夜は沈まない太陽、極夜は昇らない太陽の事を示す現象だと伝えると、ほう……と杏寿郎が感心した。

「なかなか言い得て妙だ」
「ありがとうございます…ちょっと切ない気持ちもありますけどね」


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