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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第64章 白夜と極夜 〜another story〜 ✴︎✴︎



「そうか?」
「はい……杏寿郎さんの双眸はやっぱり2つで1つだなあとも思うので」

「うむ、確かに2つあった物が1つになって残念な気持ちはあるな。その筆頭が………」

「んっ」

七瀬の唇に3度の雨を降らせた杏寿郎はそこをちう、ちう、と吸い上げると、グッと彼女に顔を寄せる。

「君のその何より愛らしい顔が、半分しか視界に入らない事が大層もったいない」

瞬間、顔の表面温度が跳ね上がる七瀬は思わず顔をそらすが、すぐに顎を取られてしまう。

そしてまた唇に数回落ちる雨は、なかなか止まない気配を予感させる物だった。

塞ぐ傘を持たない彼女は、彼の首に両手を回す。
そして降り注ぐたくさんの優しい雨をその身に受けていく。

しかし、彼女の体が雨粒で濡れる事はない。
七瀬を包むのは、杏寿郎からの胸がいっぱいになる程の日輪の光だからだ。



「七瀬、君を愛している」
「私も杏寿郎さんが大好きです。愛しています」

“愛している” の言葉を互いに伝え合った2人。
この先もきっと幾千もの愛情を心と体で共有していくのだろう。



「杏寿郎さん、そう言えば春も流星群が見れるんですよ。確か来月中旬です。一緒に見ませんか?」

「ほう…それは是非に。名称は何と言うのだ?」

「4月こと座流星群です!七夕の織姫の星ですよ」




2人が知らない所で、この日の夜空に流星が2つ流れていた。

それは数ある流星の中でも、一際明るく輝く”炎の光” —— 火球である。


紅い絆で結ばれた杏寿郎と七瀬を待っているのは、きっときっと……希望に満ち溢れた未来。

翌日の明け方、東の空に1つの明るい光が輝いていた。
それは”明けの明星”


明け星とも呼ばれているその惑星の名称は —— 金星。












end.




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