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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第64章 白夜と極夜 〜another story〜 ✴︎✴︎



「すみません、どちらからお話すれば良いです?」
「うむ、では………」

杏寿郎がまず選択したのは”持っている”と言う単語であった。

「ここ数年でしょうか………巷で流行り出した言い方の一つなんですけど、平たく言ってしまえば強運と言う意味合いです」

「なるほど!して”かきゅう”と言うのは一体?」

「はい……火球はですね……例えるなら、炎の呼吸の連撃でしょうか」

「ほう?面白そうだ。聞かせてくれ」

促された七瀬は話を続けていく。

「初めて杏寿郎さんの連撃を見た時の印象が、火球のようだなあって私は思ったんです。流星の中でも特に明るい所がそっくりだなあって」

「……そうか」

『あれ?また静かになったなあ』
再び訪れる沈黙だが、七瀬にはとても心地よい時間だった。


「七瀬が使う炎の呼吸は……強くてあたたかい」
「え?」

「君はいつでもどんな時でも、思いやりを忘れない。竈門少年に少し似ているかもしれんな!」

「炭治郎ですか?それは嬉しいですね……大切な弟弟子なので」

鬼と言う憎むべき存在に対しても、彼らが姿を散らす時には慈悲の心を向ける炭治郎。
それが時には“甘い”と評される事もあるが、七瀬はそれこそが彼の強さだと日頃から感じている。

「杏寿郎さんも炭治郎と似ていますよ」
「ははは、そうか!それは俺も嬉しいな!」

「長男で、第一子で、責任感が強くて……」
「ふむ」

「気持ちが熱くて揺るがない。ここが特に似ているかなって」
「そうか、ありがとう」

七瀬の右頬に杏寿郎の左頬がぴたりと寄り添った。

「頼みがあるのだが」
「何でしょう」

“また君に触れたくなった。ダメだろうか?”

右耳に落ちるのは低くて甘い、恋人からの誘い(いざない)の言葉とそっと触れられる柔らかい唇。

『腰が……気になるけど、でも………』
ゆっくりと上昇していく気持ちと体の温度の上昇。

七瀬はコクン、と首を縦に振り、了承の合図を杏寿郎に示した。

ありがとう、とお礼の言葉と共に右頬にも彼からの口付けが落ちる。



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