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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第64章 白夜と極夜 〜another story〜 ✴︎✴︎



2人は縁側に出て来た。
互いに羽織を数枚着込んでおり、七瀬の華奢な体は杏寿郎によって後方から包み込まれている。

「とっても暖かいです。本当に杏寿郎さんは体温が高いですよね」

「うむ、父上も体温が高かったと記憶している。煉獄家の血筋かもしれん」


成る程……!と納得したように頷いた七瀬は、両掌を彼の両腕に絡めて夜空を見上げた。

2人の吐く息は空気と混ざって白く染まるが、互いの体はぽかぽかとしている。

満天の星空が頭上に広がっていた。
七瀬と杏寿郎が見上げているのは東の方角である。


「俺の記憶に間違いがなければ、しし座流星群には……」
「はい……」 『頑張って!杏寿郎さん…』




流星群の元になる彗星があり、それは母天体と言う名称だ。
この彗星が太陽から遠いか近いか ———
それによって1時間に観える個数に違いが出て来る。



「杏寿郎さん……」
「どうした?どこか相違があったか?」

「いえ、完璧すぎて驚いてしまいました……凄いです」
「そうか!であれば安心した!」


『人の名前も正しく覚えてくれるともっと良いのだけど……』

これは口に出す事を控える七瀬であった。
後ろにいる杏寿郎が本当に嬉しそうにしている様子が伺えた為だ。


「……………」
「……………」

しばらく2人の間に訪れるのは優しい沈黙の時間。

時々煉獄邸の周辺を歩く人の足音が耳に入る事もあるが、冬が差し掛かった秋の夜はとても静かだ。


「あっ………」 「むっ………!」

暗い暗い夜空でも、そこだけはまるで夜が明けたかのように。
通常の流星よりも明るく、そして強さがある光の線が空を駆け巡った。


「観れ……ましたね」
「うむ、観れたな………」

「杏寿郎さん、持ってますねぇ。あれは流星の中でも一際明るい火球ですよ!本当に凄いです。ごめんなさい、さっきからそれしか言葉が思いつかなくて……」

「持っている……?かきゅう……?」

七瀬が称えた彼の脳内に浮かぶのは、聞き慣れない単語に対しての疑問符だ。

振り向けば眉根を寄せ、小首を傾げている杏寿郎がそこにいる。


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