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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第64章 白夜と極夜 〜another story〜 ✴︎✴︎



「やったのか?勝ったのか?!ギョロギョロ目ん玉!!」
『煉獄さん!』
『杏寿郎さん………』

3人の視界に入るのは自分達に背中を向けている杏寿郎と、こちら側を向いている猗窩座の姿だった。

七瀬の心臓も炭治郎の心臓も。
もちろん伊之助の心の臓も、その脈打つ速度が右肩上がりで上昇している。


「ぐっ………はあ………はあ………はっ……」

炎の羽織を纏った両肩が上下するように揺れていた。
足元に向かってポタリ、ポタリ、と垂れていく赤い血液が3人の両目にはっきりと映る。


「きょ、じゅ………さん………」
「……………」
「……………」

七瀬の両目から、涙が一粒ずつ流れた。



「もっと戦おう。死ぬな、杏寿郎」

先程杏寿郎がその体に浴びせた炎の斬撃はとうに塞がっており、鬼がニヤリと静かに唇に弧を描く。



『杏寿郎さん………!』

「はあ、はあ、はあ…………はっ……」
荒い息が何度も繰り返される体躯、そしてその足元周辺は赤黒い染みで塗りつぶされていた。


































「七瀬……好きだ…んっ……」
「そこは、や……もう……ぁん…」

行燈の光が優しく裸の男女の体を照らす中、室内に響くのは肌と布団と唇が隙間なく合わさる音だ。

それは5日前の夜の事。
任務から帰宅した2人は鬼を討伐した高揚感から、互いを求めて情事を重ねていた。


「杏寿ろ……さ……はあ、すみま、せん…これ以上は…はぁ…」
「むう……そうか」

彼の左肩がトントン……と力無く叩かれると、密着していた2人の間に流れるのは、ややひんやりとした空気。

『柱の体力って本当に底なし……』

激しく息が切れている七瀬にほんの少しの寂しさも見せつつ、眉を垂れ下げた杏寿郎は、彼女の腰を柔らかく撫でる。

深い深い呼吸を繰り返しながら、七瀬は気持ちと体を落ちつけ、杏寿郎の心臓にピタリと左耳をあてた。

ドク、ドク、ドク……と規則正しく脈打つ彼の鼓動を聞くと、瞬時に笑顔になる。

「君は本当にそれが好きだな」
「はい……杏寿郎さんが生きている証拠ですから」

“心の炎”と形容している彼の心臓に、そうっと口付けを贈る七瀬だ。


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