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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第64章 白夜と極夜 〜another story〜 ✴︎✴︎



「破壊殺 —— 」

血鬼術を放つ為、落ち着いた動作で両の拳を構える猗窩座。
杏寿郎もまた炎刀を真っ直ぐと構える。

足元からゆらりゆらりと陽炎が揺らめくように闘気が昇り、彼の体を赤く包んでいく。

「伍ノ型 —— 炎虎!!」

炎刀から放たれた斬撃がある姿に変化した。
それは大きな雄叫びを上げながら、猗窩座に向かっていく緋色の虎である。


「乱式!! ——— イャッハァァッ!!」

猗窩座は巨大な虎を自らの拳で嬉々として迎え打った。彼の凄まじい連撃が炎を纏いし虎に繰り出されていく。













“炎虎 対 乱式”

その勝敗の行方は ———

「杏寿郎!やはりお前のその闘気!賞賛と言う言葉ではとても足りんぞ!」

「はァァァ!!」

猗窩座の拳が鋭く速く打ち込まれるが、杏寿郎は体に触れるか触れないかの距離感を保ち、全ての攻撃を燃える炎刀で避けていく。

そしてスウ……と言う呼吸音と共に、杏寿郎の刀に炎が一際ボッと灯った瞬間、紅蓮の光が鬼に向かって放たれた。

ザクリ ———

猗窩座の体がジュッ……と焦げる音と共に深く熱く切り裂かれる。
左下段から右上段に向かって紅い炎が鬼の体を襲ったのだ。

「グッ………!」
ボタボタボタ……と地面に滴り落ちる血液と共に片膝をつく猗窩座。







「おぉっ??やったか?!!」
「まだわからないよ………」

隣に立つ伊之助に落ち着くよう諌める七瀬。
だが、その心臓は早鐘を打ちっぱなしである。

『左目は多分……もう見えてない。脇とそれからあばらにも鬼の攻撃が入っていた……』


毎日のように師範である彼と剣を交えている継子は、杏寿郎の動きをわずかながらも双眸で追えていた。

先日甲(きのえ)に昇格した七瀬だが、いまだに彼に勝った事がない。

自分にとって「強さその物」の杏寿郎が手負いの状態にある現実。悲しく、悔しい気持ちが彼女の胸に虚しく広がる。

『もっと………私に力があれば良いのに』


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