第63章 紫電の言伝を茜色の君へ
部屋には2人の少女がいた。
やや赤く充血した目でこちらを見ている。
寝台に座っている少女は俺がやって来た事に特に戸惑いの表情を見せた。
無理もないだろう。
今まで全く接点が皆無だった人物が訪ねて来れば、訝しげな反応をするのは至極当然の事だ。
「沢渡七瀬は君か?」
「はい………沢渡は私ですけど………」
俺がそう声をかけると、沢渡七瀬の背筋がピンと伸びた後、唾を飲み込む様が見てとれた。
「桐谷くんから言伝を預かっている」
一通りの話を終えると、横にいる七瀬は涙を流していた。
俺は彼女の目元を指で拭うと、右肩を優しく抱いて自分に引き寄せる。
「……世界一幸せに……ですか」
「ああ」
「それじゃあ、次のお墓参りの時に報告しないといけませんね」
「何をだ?」
彼女にそう問う。
すると七瀬は俺の手を肩から外し、後ろから華奢な両腕をそっと回して来た。
鬼殺隊を辞めた後も素振りを欠かさない七瀬だが、呼吸を使わなくなったせいだろうか。
隊士時代と比べると、やや筋肉量が少なくなった気がする。