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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第61章 茜は緋(あけ)に一生恋をする




「ん……」
再び私はゆっくりゆっくりと瞼を開けた。
すると両目に入って来たのは見慣れている蝶屋敷の天井だった。

「あ、本当に目を覚ました。七瀬ちゃん、大丈夫?」
「え……?」

疑問符を脳内に浮かべながらゆっくりと顔を右に向けると、そこには椅子に座って自分を心配そうにみている善逸がいた。


「ごめんね。煉獄さんじゃなくて」
「…………」
「そんな顔してるし、残念だなって音も聴こえる」

え?顔だけじゃなくて、音もなの?何か恥ずかしい。


「さっきもう少しで目を覚ますと思うってしのぶさんが鴉を飛ばしたから、その内来るんじゃないかな。煉獄さん」

「そうなの?」

嬉しくて起きあがろうと体を起こそうとすると、上手く力が入らない。2ヶ月も寝たきりなら当然か。
すると見かねた善逸が背中を支えて起き上がるのを手伝ってくれた。


「今ね、夢で巧と話してたの」
「え、本当に?」

「うん……早く目を覚ませって。待ってる人がいるからって」
「そっか………俺の事何か言ってた?」


あ……言われてないな、そう言えば。
私の表情で悟った善逸は「あの人らしいわ」と何とも言えない複雑な笑顔を見せる。

「七瀬ちゃんさ、めちゃくちゃかっこよかった!炎と雷の合わせ技なんてさ。本当びっくりしたよ〜」

「ありがとね。善逸の神速もかっこ良かったよ」
「へへ、ありがとう。照れるね……って七瀬ちゃん?」

善逸にニコッと笑顔を向けたのだけど、両の目尻から一粒涙が落ちた。

「私はもう………使えなくなっちゃった」


夢の中での巧との会話でわかってはいた。
ここ1年半、毎日のようにずっと使って来たものだ。意識が戻った体の感覚でもやはりそれをしっかりと実感する。


「……知ってたんだ」
「うん、夕葉に血を変えられてただけだからね」

私はふふっと笑って自分の心臓に手を当てた。


「水の呼吸もちょっと怪しかったりする……」
「ウソ、そこまでわかってんの?」
「………うん」


頭を縦に振ってそのまま顔を下に向けた。善逸も顔を俯けたのが視界の隅に見える。

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