第60章 茜が沈む、緋(あけ)が昇る ✴︎✴︎
「弐ノ型 —— 昇り炎天」
「参ノ型 —— 気炎万象」
杏寿郎の2連撃が夕葉の長い髪を半分焼き尽くし、右手の肘から先をザクリと斬り落とす。
落下した鬼の右腕の上にパサっと落ちる銀髪は、彼の顔同様綺麗な毛髪だ。
『先程と比べ物にならないぐらい、再生速度が速い…!この鬼にとって七瀬の血は稀血のような効果があるのか』
「お前の呼吸、本当痛いよ……けどそれも一瞬だ」
5秒程で焼けた銀髪と右腕が元の形に戻る。
夕葉と対峙している中、杏寿郎の視界に七瀬の姿が映りこんだ。
『あれは ———! そうか、ならば………!』
「竈門少年、もう一度連撃行くぞ!」
「は、はい!」
「肆ノ型 —— 盛炎のうねり、伍ノ型 —— 炎虎………」
七瀬が振るう炎刀には鍔側の刀身から1つ型を振るう毎に1つの炎が灯っていた。
今現在は壱の型の改、伍ノ型の改も含めた型を終えた所でその数は6つ。
丁度炎の呼吸12の型の内、半分である。
「陸ノ型 —— 心炎突輪、陸ノ型・改 —— 心炎突輪・散……」
「漆ノ型 ——— 紅蓮業火」
「ヒノカミ神楽 ——— 火車」
前方から杏寿郎が放つ紅蓮の炎、後方から炭治郎が放つ炎の輪が夕葉を襲う。
「あっついよなあ、本当。お前らの炎は……」
“血鬼術 ——— 内炎・吸(ないえん・きゅう)”
瞬間、鬼の体が炎に包まれる。
これは先程七瀬の所へと移動した際に使用した術を変化した物だ。
杏寿郎と炭治郎が放った型を自分の炎の中に取り込んでしまった。
「捌ノ型 —— 烈火の舞雲」
“よし!あと1つ ——!”
「玖ノ型 奥義 ——— 煉獄!!」
12個全ての炎が七瀬が持つ茜色の日輪刀に色付いた。
それは松明のような明るさを放っており、彼女の周囲は暖かみがある光で照らされている。
『巧……これが私だけの型だよ………』
七瀬の顔に浮かぶのは安堵の笑顔。もう一度目を瞑ると、深呼吸を一回する。そしてまた両の瞳を開けた後は日輪刀を両手で握り直した。
『負けるな』
『怯むな』
『心の炎を絶やすな、灯し続けろ』
『七瀬ちゃん……』
彼女の様子を見ていた善逸も呼吸を整え始めた。すると彼の周りに現れるのは青い稲光だ。