第60章 茜が沈む、緋(あけ)が昇る ✴︎✴︎
七瀬とカナヲを除いた3人の隊士と2人の鬼は本殿から移動して、楼門前で対峙していた。鹿島神宮の楼門は日本三大楼門の一つに数えられており、その高さは約13mだ。
「伍ノ型 —— 炎虎」
「ヒノカミ神楽 —— 炎舞」
赤く猛々しく咆哮する雄。
燃える日輪刀を下段に下ろした後、上段に切り返す連続の舞。
この2つの炎を受けるのは杏寿郎、そして炭治郎と同じように炎を操る夕葉である。
『あいつの血……少ししか取り込んでないのに凄いな』
「血鬼術 —— 狐火旋回」
ポポポ……と先程放った同じ術より一層速く炎の塊がその手に浮かぶ。
「くっ……」
「少年!」
「大丈夫です!!」
夕葉が放った術の内の1つが炭治郎の左肩をかすった。先程のカナヲと同じように、そこから煙がモウモウと上がっている。
「柱はやっぱりかわし方も上手いなあ……なんだ、お前。動けるようになったのか?七瀬」
夕葉が視線を右横に動かすと、止血し終えた七瀬が本殿から移動をして来た所だった。
「あんたは絶対今夜、倒さなきゃいけない……」
彼女は右手に持っていた刀を両手で持ち直すと、切っ先を鬼の左目に合わす。その色は自分の刀身と同じ茜色だ。
「何だ、まだそんな事言うのか。聞いてた?お前のその呼吸は偽物……」
「やめてくれないか」
「あっ?何をだよ」
夕葉の言葉を遮ったのは杏寿郎だった。
「大切に育成している継子の価値を落とすような発言はやめて欲しいと言っている」
炎の柱もまた刀の切っ先を夕葉の瞳に合わせる。緋色の炎刀と茜色の目が真っ直ぐと繋がった。
「……おい、お前も俺がさっき言った事聞こえただろ?こいつの呼吸が使えるようになったのは、俺が術をかけたからで……」
「だからどうした。そんな物はきっかけに過ぎん。確かに俺達が使用する呼吸術は適正と言う物がある。しかしだ。それがあったとて呼吸を使いこなせるかどうかはまた別の話」
「……で?それがどうだって言うんだよ」