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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第60章 茜が沈む、緋(あけ)が昇る ✴︎✴︎



「ああ、それから……お前があいつと1つに繋がった時だったか?生きててよかったとまで思ってたよな。本当に愉快でたまらなかった。その幸せは俺が与えてやった物なのに」

「もういい!やめて!」

「馬鹿だな。やめろと言われてやめるわけないだろ」

七瀬は心が動揺してこの時、気づいていなかった。夕葉の両腕が手首まで再生していた事に。

「とにかくその呼吸が使えるのはお前の力でもなんでもない。全部俺がそうなるようにしむけただけだ」

「全部…?」
彼女の両目が涙で滲んでいく。

「ああ、全部だ。だからお前が使用して来た炎の呼吸は幻なんだよ。偽物の技だ。哀れだなあ?七瀬……」

鬼の口元に綺麗な狐が描かれた。


『偽物?私の呼吸が?そんな……それじゃあ私は何の為に鍛錬してきたの?』

七瀬の脳裏に響くのは恋人でもあり、師範でもある杏寿郎の声。
“俺の自慢の継子だな!” “優秀な弟子で鼻が高い!”


以前継子の自分に向けて言ってくれた褒め言葉だ。そして、彼女の視界が少しずつ黒くなっていく。

『もう嫌………偽物の呼吸なんて、そんなの使いたくない!!』

「………うっ……はっ……」

—— その時。
完全に再生した夕葉の鋭い爪が七瀬の心臓に当たる部分にグサリと食い込んだ。体には痛みより先に熱さが広がっていく。


「げほッ」
鬼が爪を引き抜くと、七瀬の喉の奥から血が吐き出され、彼女の右手から日輪刀が力無く滑り落ちた。


「やっとお前の血が俺の元にやって来た………今ここで、完全に喰ってやる —— 血鬼術 」

“炎心・極”

夕葉の右手から青白い炎が当たる直前、両膝を地面について力無く倒れようとしている七瀬を支えたのは彼女の友人だった。


「花の呼吸 終ノ型 ——— 彼岸朱眼(ひがんしゅがん)」

ジュ……と肌が焼ける音が響き、カナヲの右肩からモウモウ…と煙が上がっている。


「え、カナ……ヲ?」
『彼岸朱眼は失明の危険性があるって聞いた……何で?どうして私を??』

額に大量の汗を浮かべたカナヲが苦しそうに目を開け、七瀬を見つめる。


「………七瀬ちゃん、呼吸で止血」
「……………」
驚きと戸惑いで返事が出来ない七瀬だ。


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