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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第60章 茜が沈む、緋(あけ)が昇る ✴︎✴︎


2日前の水曜日 ——— 風柱邸にて。

カン、カン、カン。
2本の木刀の小気味良い音が響く中、実弥がスッ……と呼吸を変え ——

「風の呼吸」
グッと重心を低く落とした彼は、下段から上段に舞い上がるような砂ぼこりを連続で放つ。

「肆ノ型 —— 昇上砂塵嵐(しょうじょうさじんらん)」

七瀬を真っ向から襲う攻撃の型。対し ——
「炎の呼吸」
右肩の上に構えた彼女の木刀から、グワッ……と炎の粉が舞う。

「捌ノ型 —— 烈火の舞雲(れっかのまいうん)」
粉が龍に変化しながら螺旋状に昇って行き、実弥の型を捉えるとそこを目指して一気に急降下する。

「はッ、威力上がってんじゃねぇかァ。甲(きのえ)になっただけあるなァ」

「参ノ型 —— 晴嵐風樹(せいらんふうじゅ)」
「んっ、」

炎龍が竜巻の斬撃で激しく斬りつけられる中、七瀬は咄嗟に出した壱ノ型で衝撃を逸らした。

「判断力もなかなかと来たかァ」

ガンッ—— ガンッ ———

『毎回の事だけど、何で移動速度がこんなに速いの……!』

刹那と呼ばれる間に七瀬の間合いに入り込む実弥。上段から一回、向かって右側から薙ぐ太刀が一回。


『不死川さん、剣圧また上がった……杏寿郎さんと変わらないな…』

顔を歪めながら風柱の太刀を受け流した彼女は、その反動を使って後方にくるんと一回転をする。

「おィ、まだ気ィ抜くな」

ガンッ!!! ———

「いったい!」
実弥の木刀は七瀬の木刀を勢いよく弾いた ——










「お疲れさん」
「ありがとうございました……」

ペタ…と両手首に冷えた手拭いをあててくれた実弥にお礼を言った七瀬は縁側に向かう彼の後をとことことついていく。
そこには複数個のおはぎと、2人分の湯呑みがおぼんに置かれていた。

「うめェ……」
「はい、今日もおはぎ美味しいですね」
美味しさを噛み締める2人はさながら兄妹のようである。


「とうとうあの鬼と対峙するんだってなァ」
「はい、そうです」


「死ぬんじゃねェぞ」
「ふ、あはは……」

「お前、人が激励してやってんのに笑うたァ、どう言う了見だ?」
「すみません、実は……」

七瀬は2日前、水柱邸を訪ねた時の話をしていく。




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