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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第60章 茜が沈む、緋(あけ)が昇る ✴︎✴︎


その身の丈は180センチ。大正時代にそぐわぬ高さだ。

「炎の柱に一般の鬼狩りが5人に…ん?何だあの女。……俺と同じ鬼の匂いだな」

男の鬼は顎に手をやり、うーんと1つ唸る。そして形の良い唇にニヤッと放物線を描いた。


『へぇー……鬼殺隊も随分様変わりしたもんだ。鬼が人間の味方をするとは、これはまた面白い事になってるじゃないか』

月の光の下でも夜闇に溶け込む群青色の着流し。
小作りの顔は白くきめ細やかな肌。
スッとした曲線で形成されている鼻の上には、夕暮れを思わす茜色の双眸。そして左の眼球には12鬼月の証である”下 壱”の2文字。

「お手並拝見……と行くかね」
鬼の右掌の上にポ、ポ、ポ、と炎が灯る。

「血鬼術 —— 燐火・散(りんか・さん)」
6つの炎が放射状に放たれた。








「 ———近いな。この先に鬼がいるようだ」

杏寿郎一行は必勝祈願をした後、二手に分かれて神宮内や周辺の位置関係を散策がてら確認をしていた。
一通り終わり、気づいた事や疑問に思った事を各自意見交換し、大鳥居の前に戻った矢先に彼から放たれた言葉がこれである。


「本殿の辺りから鬼舞辻によく似た匂いがうっすらと香って来ます…」

「ムー、ムー」

炭治郎の横で兄の言葉に頷くように、可愛らしい声を口枷越しに発するのは禰󠄀豆子。鬼だが、人を襲う事はない。


『私にもわかる……炭治郎のような嗅覚や善逸のような聴覚はないけど、体で感じる本能的な物と言ってよいかも』

青紫の羽織をグッと握るのは七瀬だ。


「七瀬ちゃん、めちゃくちゃ体からこわばっている音がするよ」

「あ、うん。だよね……」

「一緒に深呼吸しよう?」

彼女は右横にいる善逸からの指摘の後、その隣にいるカナヲから深呼吸をする提案をされた。

一度目をつぶり、スウ………ハア………と深くゆっくりな動作を2回。2回目の息を完全に吐き切ると、双眸をぱちりと明けて両頬をパン、と軽く叩く七瀬である。


「行けるか?」
彼女の左横から杏寿郎が問うと縦に頭が一度振られた。

「では、進むとしよう」

『巧、見てて』

大鳥居をくぐる瞬間、再び青紫の羽織がギュッと右手で握られた。



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