第60章 茜が沈む、緋(あけ)が昇る ✴︎✴︎
この車両は国鉄(=JRの前身企業)ではお馴染みのボックスシートと呼ばれている座席になっており、進行方向には窓側からカナヲ、七瀬、杏寿郎が。
対面側の座席には窓側に善逸、通路側に炭治郎が座っており、禰󠄀豆子が入っている霧雲杉の木箱は善逸と炭治郎の間に置かれている。
「又、こんな解釈もあるな。草薙剣(くさなぎのつるぎ)は須佐之男命(スサノオノミコト)、八咫の鏡(やたのかがみ)は天照大神(アマテラスオオミカミ)、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)は月読尊(ツクヨミノミコト)」
「へえー、スサノオが剣に当てはまるのは何となく想像出来ていましたが、他2つも神様達に例えられているんですね……」
七瀬は通路側に座っている杏寿郎が、胸に抱えるようにして持っている、黒い樹脂製の箱をチラッと横目で見る。その長さはおよそ1メートルだ。
「ふふ、何だかとても親近感を感じます」
彼女はそうっとその樹脂製の箱に右手を当てた。
「あ、じゃあこっちの鏡は杏寿郎さんに例えられますかね?アマテラスオオミカミ」
「……そうかもな」
それから各自、東京駅で杏寿郎が一括購入した駅弁を食べ始める。満場一致で牛鍋弁当となった。
「美味しいね!」
皆が口々に言う中、一際響く声はもちろん ——
「美味い!!!!!」
『ん、槇寿郎さんのおにぎり美味しい……。形は少し不恰好だけど、一生懸命握ってくれたんだなあ』
弁当を食べ終えた七瀬の左手に乗っている3つのおにぎりはどれも俵型で、具はこんぶ・梅干し・鮭である。
尚、これは杏寿郎のおにぎりの具も同じだ。
「ご乗車ありがとうございます。次は取手ー取手ー。乗り換えのご案内を致します……」
「あっ、降りないといけませんね!」
「うむ、忘れ物がないようにな!」
車内放送に炭治郎が反応して、食事を終えた一同はそれぞれが降車に向けて準備を始めた。
取手駅から千葉の我孫子駅を経由し、その後は成田線に乗り換えだ。ここから5人は成田へと向かう。