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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第60章 茜が沈む、緋(あけ)が昇る ✴︎✴︎



再び裸になった2人は互いにまず口付けを交わした。啄み合うかわいい物、舌を絡ませる大人っぽい物。
そして赤い花を鮮やかに体躯に咲かす濃厚な物……と様々な意味を持つ唇でのやりとりだ。

それらを何巡かしたのち、 2人は数回体を1つに繋げた ———


杏寿郎の布団に横たわり、穏やかな表情を見せながら寝息を立てているのは七瀬である。
湯浴みを済ませ、部屋に戻って来た途端に彼女はあっという間に寝付いてしまった。


『よく寝ている……』

親指と人差し指でふにっと七瀬の右頬を挟んでみても微動だにしない。
指を離すと、寝間着の隙間からは先程自分が刻んだいくつもの赤い花々が目に入る。彼がそこに水やりを施すような口付けを数回落としても、七瀬は全く反応しない。


『これならどうだ?』

いつものように彼女の左頬をゆっくりと撫でると、ふふっと声を漏らした後、むにゃむにゃと何やら寝言を呟く。
そして再び規則正しい寝息を響かせながら、穏やかな表情に戻る。


『君は寝ている時でも、ここに触れられるのが好きなのだな』

ほんの一瞬だけ杏寿郎に加虐心がよぎったが、それはグッと心の中へ留める代わりに、七瀬のふっくらとした唇へそっと口付けを落とした。


『七瀬……君の願いが叶うように俺も力を尽くそう。今夜はゆっくり休んでくれ』

恋人を己の胸に引き寄せ、頭頂部に顔を寄せると、彼はその双眸を静かに閉じる。

「ん……杏寿郎さん……好き……」

彼女の言葉が入眠への誘い(いざない)となり、杏寿郎はスッと寝入ったのであった ———













「それでは行って参ります」
「行って来ます」

翌朝 ——
七瀬と杏寿郎は玄関先で、槇寿郎と千寿郎に挨拶をしている。いよいよ鹿島へ出発する朝がやって来た。

「兄上、七瀬さん、ご武運を願っています。荷物になって申し訳ないのですが、これどうぞ。因みに七瀬さんのおにぎりは父上が……」

「こら、千寿郎!余計な事を言うな……」

竹皮の包みを2人に渡しながら千寿郎がそんな事を口にすると、途端に顔を赤く染める槇寿郎だ。


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