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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第60章 茜が沈む、緋(あけ)が昇る ✴︎✴︎



「昇り炎天って炎の輪ですよね。あれいつも太陽の輪っかのようだなあって思うんです」

「ふむ」

「私、杏寿郎さんの目も凄く好きで……」

「七瀬、昇り炎天と俺の目とどう関係があるのだ?一向に話の主旨が見えんぞ」

「すみません、じゃあ結論から言います」

「頼む」


ふう……と七瀬は息を深く吐くと彼の両頬をそっと包み込んだのち、じいっと杏寿郎の双眸を覗き込む。

「どうした?顔が赤いぞ」

「……だって杏寿郎さんの目は凄く綺麗だから………吸い込まれてしまいそうだなあっていつも思うんです」

「そうか」
ふっと加虐の笑みを見せた彼はずずいっと七瀬に近づいた。

「わっ、ちょっと近すぎ……」
「もっと近くで見たいのだろう?俺は君の希望通りの事をしているだけだが」

コツンとおでこ同士が当たり、七瀬の両手に彼の両手がそっと重なる。

「続きを所望する」
彼女の心臓はとても、とても速く脈打っていた。


「はい……昇り炎天を放つ時、いつも杏寿郎さんの双眸のような輪を描けますようにって……思いを込めてやってます。大好きなあなたを連想させる型だから……んっ」


その言葉の先は杏寿郎の唇によって遮られてしまった。
角度を何度も何度も変え、彼は目の前の恋人に口付けを贈る。
愛おしい気持ちをたくさん込めて。



「七瀬……」
「はい……」

今度は杏寿郎が七瀬の双眸をじいっと見つめ、再び顔を赤くさせる恋人の左右の目元に触れるだけの雨を落とした。


「君が俺の目を気に入ってくれているのと同じように、俺も君の瞳がとても好きだ。故にずっと見つめていたいと思う」

「ありがとうございます……嬉しい……です」

頬を染める恋人を再度その胸に引き寄せ、彼は七瀬をぎゅうっ……と抱きしめる。

2人を包む周囲の空気はひんやりとしているが、互いの心の中はほくほくとあたたかい温度で満たされていた。

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