第60章 茜が沈む、緋(あけ)が昇る ✴︎✴︎
きらり、きらりとその後も流星は4人の頭上を彩り、その光の尾を伸びやかに移動させ、そしてほんの一瞬の煌めきを次々に見せていっては消えていく。
『去年は大好きな彼と観れて、今年は彼の家族とも観れて私本当に幸せだなあ………』
七瀬は夜空を観ながら胸がいっぱいになっていた。ふと自分の左手にあたたかい右手がコツンと当たる。
見ずともわかる。これは恋人の手だ。
「あの……煉獄家の皆さんは全員”持っている”と思います」
「?七瀬…持っているとはどういう事だ?」
彼女は先程槇寿郎と千寿郎に言った事を今度は同じように杏寿郎に伝えていく。
「それと同じように煉獄家の男性達は太陽みたいだって言ったの覚えてます?」
「無論!」
「へえ、太陽ですか…」
「………七瀬さん。息子達はわかるが、俺もか?」
「はい、もちろん槇寿郎さんもですよ」
杏寿郎、千寿郎。そして槇寿郎がそれぞれ反応を見せる。
しし座流星群には母天体と言って、元になる彗星がある。
その彗星が太陽から遠い位置にあると、1時間に数個程度しか観測出来ない。
昨年杏寿郎に伝えた事と全く同じ事を七瀬は伝えていった。
「皆さん、とにかく太陽と形容して良い方達ですからね。この夜空の下に3つも揃っている。これってとても凄い事だなあと本当に思います。夏の流星群の時も同様に感じたのですが、私の周りだけ夜じゃないみたいですもん……」
彼女はぐるっと3人を見回す。
暗い夜でも夜空で輝く星に負けない明るさ。そう言っても良い金色の髪の毛、そして炎の輪のような双眸。
「夜がやって来ても沈まない太陽、でしょうか」
「沈まない?……そんな現象があるのか!」
「ええ、父上。あるんです。七瀬さん、確か白夜でしたね。異国で観れると以前読んだ本に記されていました」
「千寿郎くん、本当に何でも知ってるね。凄いよ……」
「うむ、やはり千寿郎は流石だな!」
先程の槇寿郎同様今度はううむと七瀬が唸り、その横では頷きつつ、にこやかな笑顔を見せる杏寿郎がいる。