第60章 茜が沈む、緋(あけ)が昇る ✴︎✴︎
それから3日後の水曜日。
杏寿郎一行は任務を滞りなく終わらせ、伊勢から帰京した。
神器は重要な品の為、一旦鬼殺隊本部に置かれている。
「お疲れ様でした。持ち帰るのも大変だったでしょう?」
まあな……と杏寿郎は自分の部屋まで共に来てくれた七瀬の頭にぽんと手を乗せた後、彼女をその胸に抱き寄せた。
「以前君と仲違いのような状態になっただろう?」
「ああ、喧嘩しましたよね。あれは思い出すのも恥ずかしいです…」
杏寿郎と七瀬が恋仲になり、丁度一年。
その間に互いの気持ちのすれ違いがあったのは一度だけで、基本的には仲睦まじい2人である。
「あの時、君に触れられなかったのが3日。今回も3日。日数としては同じだが……」
「はい……」
七瀬の頬が彼の両手によって優しく包み込まれる。
ドキドキと心地よく高鳴っていく鼓動。
「以前より君を大事に思う気持ちが大きくなった。故に七瀬に触れたい欲が増大している」
「はい………」
ちう、と一回小さな口付けを交わす2人。
——— その日の夜未明。
「すみません、もう……ダメです…湯浴み行きましょう……」
「むう、そうか……」
七瀬と杏寿郎は任務から帰宅後、3日分の隙間を埋め合うように互いを求めたのだが ——
『流石に二桁超える情事は……腰と足が……もうダメ……』
ふう……と息を深く深く吐き出した彼女はうつぶせにふしていた体をどうにか起こし、布団の近くに置いていた寝間着をその身に羽織る。その間に杏寿郎も着流しを着用していた。
「杏寿郎さん、お願いがあります……」
「ん?どうした」
「足、痺れちゃって……すみませんが…」
「承知した!」
これ以上ない笑みで七瀬に笑いかけた杏寿郎は彼女をさっと横抱きにし、浴室へと向かったのである。
そしてあくる日。木曜日の朝 ———