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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第60章 茜が沈む、緋(あけ)が昇る ✴︎✴︎


「ええ、最初は噂通りとても怖かったですけど……」

風柱 — 不死川実弥はこのように”怖い”と言う形容詞が鬼殺隊内で常に一人歩きしている。

「でも風柱様、とてもお優しい方ですよね。振る舞いが不器用と言いますか、粗野な所がありますけど。行動をよく見れば誠実さがわかります。柴崎くんから聞いていた通りでした」

……と、実弥はわかる人間にはわかる性質。隊士でそれを把握している割合は全体の1割程だ。

実に少ない。


「おはぎがお好きな所もその……こう言っては何ですが、とても可愛らしいなあって」

亜佐美の発言にニコニコと嬉しそうな顔で聞いている七瀬に対し、炭治郎と善逸は終始脳内に疑問符がぷかぷかと浮かんでいる。

「俺さあ、炭治郎。あの人だけは一生わからんわ……」
「……そうだなあ」

それから亜佐美も交え、2つの重要な任務の確認を終えた一行は帰路につき始めた。










「我妻少年、少しいいか」

門扉に向かって歩き始めた炭治郎、善逸、伊之助をこの一言で呼び止めたのは杏寿郎。
善逸は2人に先に帰宅するよう促し、1人残る。


「……七瀬ちゃんの事ですよね」
「そうだ、察しが良くて助かる。しかし君にも関係がある話だ」
「俺も……?」

右人差し指で自分の顔を示した善逸は杏寿郎に促され、再び縁側に腰掛け話し始めた。














「……………」
七瀬は自室で文机の前に座り、呼吸帳を開きながら1人思案していた。

『とうとう、あの鬼との対戦か……』

太刀掛けにかけてある自分の日輪刀に視線をやる。
前回対戦時、自分が使用出来る呼吸は水の呼吸のみだった。

『今の私には炎の呼吸もある。杏寿郎さんに毎日のように指導してもらって……稽古や実践で磨いて来た。あの時よりは強くなっているはず』

思考が定まった彼女はある人物に宛て、文を書き始めた。

【アオイちゃんへ

七瀬です。先日はありがとね。アオイちゃんに折いってお願いがあります………】













「ではまたな!5日後の金曜日に東京駅で」
「はい、また。煉獄さんも伊勢に鹿島と大変ですね……」
「案ずるな、俺はいつもの事だ!」

杏寿郎は善逸と話した後、門扉まで送り、その足で七瀬の部屋へと向かった。

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