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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第58章 緋色の合図、茜色のサイン、2人のeyes


彼の左手が私の右手をそっと持ち上げる。何だか機嫌がよろしくない様子だ。

「あの……杏寿郎さん?」
「以前言ったな。君の爪紅は俺だけが独占したいと」

「……はい」
「であれば、もっと自覚してくれ」

「ん……」
指先に複数の口付けが落ちる。

「茜色は君を表す色だ。この色は俺だけの為に見せてほしい」
「ふふ、わかりました」


再度彼にぎゅうっと抱きつけば、また杏寿郎さんの腕が私の体を包み込んでくれる。


「すまんな、君の事となると独占の欲が表出しやすいようだ…良くないとはわかっているのだが」

「先日も伝えた通り、杏寿郎さんの独占欲はちょうど良くてむしろ心地よいぐらいですよ」


意地悪するのはもう少し控えてほしいけどね。


「ふむ、ならばその独占欲、受け止めて貰えるか? 七瀬……」
「えっ……」


彼の双眸に静かだけれど、力強い炎がポッと点灯する。

「あの、でも湯浴み、」
「まずはこちらが先だ」

「んっ」

顎を優しく掴まれ、口付けが私の頭上から降って来た。その気持ちよさに自然と彼の首に両腕を回してしまう。


杏寿郎さんが私を柔らかく見る視線が、“自分と深い時間を過ごしたい“と言う合図なのに対して、私が彼の首に両腕を回す。


これをする時は“その先に進んでも大丈夫”
そんな合図にしている。いわば合言葉のような物だ。

お互いの唇を啄む音を響かせながら、着ている物を一つずつゆっくりと外していく。

羽織、隊服の上下、足袋、脚絆、下に着ているシャツ、と続いて最後にお互いの下着をするっと取り払ってしまえば、私と彼を隔てる物は何もなくなり、2つの体を行燈の優しい明かりがぼんやりと照らす。


目の前にはいつ見てもため息が出てしまう程、逞しく均整が取れた見事な体躯。何度もその姿を見ているけど、毎回毎回はっとさせられてしまう。

そして自分の体もちらりと確認をした。隊士だから仕方のない事だけど、決して少ないとは言えない傷跡がそこかしこに存在している。正直増えるのを見る度に落ち込んでしまうんだよね。


ふう……と体のある部分を見てため息をついた私を見て、彼が声をかけて来た。



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