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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第58章 緋色の合図、茜色のサイン、2人のeyes


『絶対その女将さん、杏寿郎さんの事気に入ったんだろうなあ』
恋人の私から見ても、ひいき目なしにかっこいい人だ。

そしてあのため息が出る程綺麗な剣技を間近で見たとなると………。
はあ、とため息が1つ出る。この家に帰って来てくれて本当に良かった。


「うまい!!!!」 「わっしょい!!!!」


杏寿郎さんの「うまい」そして「わっしょい」はきんつばを食べ切るまで、途切れる事はなかった。

















「七瀬?入っても良いか?」
「あ、はい。どうぞ」

炭治郎、善逸、伊之助達が帰宅して30分後。杏寿郎さんが私の部屋を訪ねて来た。
彼を招き入れると、左掌に紅が入っているアルミ製の小さな容器をポンと乗せられる。丁度掌に収まる大きさだ。


「杏寿郎さん?これは......?」
「目張り(めばり=アイシャドウ)用の紅だ。君は持っていないだろう?」

「はい、でもどうして?」
「甲(きのえ)の昇格祝いだ。これは宇髄から勧めてもらった」


「わあ、嬉しいです!開けてみても良いですか?」
「是非に」

何色なのかな?一般的には赤だけれど。
蓋は小さな桃が散りばめられており、その周りは彩度が高い黄色で塗られている。右手の親指と人差し指で回しながら開けていくと姿を現したのは……


「へぇ…単色じゃなくて3色なんですか!可愛い!」

そこには1番上に黄色、その下の左側にくすんだ桃色、右側に灰色と紫を混ぜたような茶色が容器に塗りつけてあった。

「塗るのが凄く楽しみです……!」
ありがとうございます、とお礼を言いながら彼の頬に口付け。


「気に入って貰えて俺も嬉しい。所で………」
「どうしたんですか、杏寿郎さん」

紅が入っている容器を閉め、上を向くとそこには自分の顔をグッと近づけて来る彼がいる。

「先程の上書きをする」
「上書きって何……んっ……」

右耳に杏寿郎さんの唇が当たったかと思うと、温かい舌がつつ…とそこをゆっくりと辿った。
最後に音を響かせ、唇が離れる。

「我妻少年と何を話していた?」
「善逸と話って……あれですか?鰻を食べてた時の」

「そうだ」
「…………」


『わっやべー……』
思い出すのは焦っていたような善逸の声だ。
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