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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第58章 緋色の合図、茜色のサイン、2人のeyes


「流石は老舗の味だ、なあ?千寿郎」

「はい!父上、とても美味しいです……」

槇寿郎さんと千寿郎くんが目を合わせながら親子の仲睦まじい姿を見せる中 ———




「美味い!!!!」


客間の空間が震えるような声量が私達4人の前から響く。
いや、本当に震えていた。座卓、朱雀の掛け軸、襖、座卓に置かれている7人分の湯呑み。
それらが実際にガタガタ、と音をたてたからだ。


「煉獄さん、すごいね……。今日は一段と胸にも体にもガツンと来る”美味い”だよ……」

「うん……清々しさも突き抜けているよね。空に届きそう」

「でね、七瀬ちゃん」

「ん?何、善逸」

善逸が私の右耳に口を寄せて来る。

「煉獄さんは俺らの昇格も喜んでくれてるんだけど、七瀬ちゃんの甲昇格が本当に嬉しいみたいだよ。嬉しさの音が俺の耳でも拾えきれないぐらい、弾んでるから」

「………そっか」

「うん!……わっ、やべー…」

「え、何?どうしたの……」

善逸は突然私の耳から口を離すと、今度はこれ以上ない笑顔を見せながら大きな両目からたくさんの涙を流し始める。


「特上さいっこー!……グスッ……俺、本当生きてて良かった〜」


今日出前で注文したこの特上の鰻重は、麻布飯倉に本店を構える「野田岩」の物で、創業はこの大正より100年前の寛永年間。
徳川第11代将軍の徳川家斉(とくがわいえなり)が治めていた時代。

家斉の墓所は先日善逸と鬼の討伐で向かった上野の寛永寺だ。

「はあ、美味しい……」

槇寿郎さんも言っていたけど、流石は老舗。品格を感じる味付けだ。このタレも本当に絶品。とても家庭で出せる味ではないなあと素人目でも感じる。











「えっ?きんつばもあるんですか?良いんですか?頂いて!!」

「勿論だ!山梨に任務で向かった際、助けたご婦人が甘味屋の女将でな。是非持ち帰って欲しいと言われた!」


私と同じように甘い物が大好きな善逸。そして値段が高い物も大好きな善逸。先程と同じように大きな目を再度見開いて杏寿郎さんと会話をしている。

恋人が持ち帰ったきんつばは、さつまいもで作った芋餡を包んだ物で「薩摩きんつば」と呼ばれている。

助けた女将さんに好物を聞かれた杏寿郎さんがさつまいもと告げた為、両手で持てないぐらい持たされたそうだ。

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