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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第58章 緋色の合図、茜色のサイン、2人のeyes


客間に集まった私達七人の前に一つ一つ鎮座しているのは、ツヤツヤとした黒い漆器(しっき)のお重。

「3人共、先日階級が上がったそうだな!おめでとう。今日は特上にしたぞ」

「と、と、特上ですかっっ??あの!あの!煉獄さん?よよよろしいんですか??」

杏寿郎さんから“特上”と言う言葉が出た途端、大きな目が飛び出るのでは……そんな表情を見せる善逸だ。
善逸と伊之助はあれから階級が上がり、丁(ひのと)に。炭治郎は将門塚再建に携わったので、更に1つ上の丙(ひのえ)に上がった。


———そして。


「七瀬の甲(きのえ)昇格祝いも兼ねているんだ。特上にふさわしい!正にお祝いご膳だな!」


私は将門塚再建並びに12鬼月の頸を献上した功績を認められてか、階級が上がった。甲は柱と同じ階級である。

杏寿郎さん、そして巧と同じ位置……。
手の甲に浮かび上がったのを見た時は思わず飛び上がってしまった。


ようやくここまで来た。苦しい事も悲しい事もたくさんあったけれど、本当に頑張って来て良かった。


「いただきます!」

座卓には左から伊之助、炭治郎、私、善逸と横並びで座っており、対面側には千寿郎くん、槇寿郎さん、杏寿郎さんの順で座っている。


「美味いよ〜、美味くて涙出るよ〜特上なんて食べれる日が来るなんて思わなかった……俺、もう死んでも良い……あ、ダメだ、俺が死んだら禰󠄀豆子ちゃんが悲しむ!」

「善逸…お前は生きるのか死ぬのか、どっちなんだ?」

「うはっ!うめぇ!この鰻のばば焼き、うっめぇ!!」

後輩3人は相変わらず賑やかだ。
因みにおわかりかと思うが、伊之助が言った”ばば焼き”は”蒲焼き”の事である。


黒い漆器の蓋を開けると姿を現すのは特上にふさわしく、器を埋め尽くす大きさの鰻。
ところどころに焦げている箇所がまた食欲をそそる。黒いタレは醤油とみりんで味付けしてあり、甘辛く上品な口当たり。



鰻は脂(あぶら)が多いから消化を手助けしたり、泥臭さを消すと言う意味で、食べる直前に山椒の粉を好みで振りかける。

山椒があまり得意ではない私はふりかけずにそのまま食べる事が多いのだけど、煉獄家の3人は必ずと言って良い程振りかけて食べている。


これもこの家の風習なのだろうなあと思う。

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