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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第57章 緋星(あけぼし)喰われしその時に、心炎で天蠍を衝け ✴︎✴︎


「終わった……」
私はもう一度フウ……と長く息をはいた後、改めて将門塚に向き合い、目をつぶって一礼をした。

再建した自分をもしかしたら守ってくれたのかもしれない。そんな思いがふと湧き上がったからだ。


『ありがとうございます、無事に終わりました』

そう心の中で呟き終わり、目を開けて顔を上げるとそう言えば…と思い出したように塚がある空間を見回してみた。


入って来た時は頸を献上する事に必死で気づかなかったが、石室内は松明で照らさずとも明るくなっていた。石達がぼんやり光っている…とでも言えば良いだろうか。朝霧の頸を斬った事も関係しているのかもしれない。


「七瀬」
後ろから私を呼んでくれたのは、杏寿郎さんだ。やや心配そうな表情でこちらを伺うように見ている。

「無事に終わりましたよ、ほらこれ」
左手の甲を彼に見せると、途端に目元が綻ぶ。そして私の目の前まで歩いて来た杏寿郎さんは、自分の2つの掌で優しく私の両手を包んでくれた。

「鬼殺隊にとって、無論俺にとっても…君のこの両手はとても大事な物だ。失われなくて本当によかった…!」

彼は包んだ私の手を自分のおでこにコツン、と当ててくれる。手と手の隙間から伝わって来るのは杏寿郎さんの体温だ。

願うように目をつぶっていた彼はやがてそれを開け、私の左手首に視線をやる。

「父上と千寿郎に感謝せねばな」
「…はい」

そう、彼の黒色の組紐と私の赤色の組紐は2人が町で見つけて購入してくれた物だ。

“必ず上手くいきますよ”
“絶対に最後まで諦めない事”

そんな思いを込めて選んでくれたと聞いた。

「さっき、将門公にもお礼を伝えました」
「そうか。では俺も……」

両手から温もりが一旦離れ、少し寂しいな…と思ってると彼の右手が私の左手に絡む。そうして2人で塚に行くと、杏寿郎さんが目をつぶって一礼をした。

数秒の後、目を開けた彼は再度笑顔を見せる。

「杏寿郎さん、ちょっと……」
「ん、どうした?」
私は杏寿郎さんの手を軽く引っ張りながら、南の柱がある方向に向かって歩き出した。



「将門公の前では恥ずかしいなあと思って……」
赤い柱がある空間に着くと、私は自分の両手をゆっくりと彼の大きな背中に回す。
すると、それに応えてくれるように私の背中にも温かい両手が回った。
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