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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第57章 緋星(あけぼし)喰われしその時に、心炎で天蠍を衝け ✴︎✴︎


「あなたを守れて良かったです、と言いたい所ですけど。結局また守ってもらっちゃいましたね」

いつものように彼の広い背中をゆっくりと撫でると、これもまたいつものように私の背中が柔らかく撫でられる。
左耳からは杏寿郎さんの心臓の鼓動が響く音。さっきまで昂っていた気持ちがあっと言う間に落ち着いていく。

私にとって、とてもとても大切な場所だ。

「そうか?朝霧の頸を献上しただろう。蠱毒から守ってくれたと俺は思っているが」

「はい。それはそうなんですけど……。頸を斬って下さったのは杏寿郎さんです」

“ありがとうございます”その思いを込めて、再度ぎゅうっと彼を抱きしめた。


「良かったです。またこうしてあなたを抱きしめる事が出来て。そして終わった今だから白状しちゃいます……」

「ああ、聞かせてくれ」


「あの時あなたを守るって言いましたけど、本当は物凄く不安で不安でたまらなかったんです。だから千寿郎くんには弱音吐いちゃいました…」

「うむ、であろうな!」

………ダメだな。私は本当にこの人に敵わない。

「君は手合わせをしている時は特にそうだが…大事な局面程、不安や弱音を隠すだろう? 隊士としてはそうしなければならない時が殆どだ。故にそれは正しい選択だと俺も思う」

背中に回っていた両手が今度は私の頬を包み込む。目線を合わすとそこには自分を愛おしく見つめてくれる日輪の双眸がある。



「しかしだ。七瀬は俺の恋人でもある。大事に思っている君が辛い時、迷っている時は……」
「ん……」

唇に柔らかく、温もりがある口付けが届く。

「真っ先にそれらの思いを受け止めたい。そう思うのはわがままだろうか」

また優しい口付けをくれる彼。顔が離れるとにっこり笑いながらこう言って来た。


「俺は君より体も大きいし、体重も当然ながら重い!だから文字通り、君を支える事が出来るが?」

「それ、私がこないだ言った事……」

「ああ、似たような事を言っていたな?」
恋人の双眸にほんの少し悪戯心が宿っている。



『杏寿郎さんは大きくて重いから、小柄な私ではよろけてしまいます』
冗談ではなく、本当にそう思ったから言ったのだ。


「今夜の労いをする際に、よろける君も是非見せてくれ」
「もう……!」


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