第10章 師範と継子 +
「殆どが男性隊士からの果たし状です……」
私は、はあ……とため息をついた。
「そうなのか?」
「はい、師範の継子になってから急増しまして……」
その内の何枚かを師範に渡すと、どれ……と言いながら目を通す。
【勝負しろ。次こそお前に勝つ】
【沢渡、俺はお前を炎柱の継子とは認めない!】
記載されている内容はこんな感じだ。
「師範は男性隊士から凄く慕われていますからね。女の私が継子をしている事を面白く思わない—— そんな人達も隊士の中にいるんですよ」
「ふむ、そうか?」といまいち本人は腑に落ちない様子。
そうなんですよ………と私は心の中で突っ込む。
お願いだからこのへんもっと自覚して欲しい。
「しかし、沢渡。君が負ける事はないのではないか?」
師範は手紙を私に返しながら、フッと笑顔を見せる。
「うーん。まあ確かに負ける事はなくなったかもしれませんね?」
一応、毎日のように厳しいと評判の炎柱の稽古をこなしている。
そのお陰か、力が自分より強い男性隊士に対しても簡単に負けなくなった事は確か。対応力が格段に上がったからかもしれない。
「七瀬さんは本当によく頑張っていらっしゃいますもん。俺もすごいなあといつも思ってます!」
「千寿郎くん……」
煉獄兄弟の優しさって心に染みるなあ。
師範は稽古に対して凄く厳しいけど、それは私を思っての厳しさ。
言いにくい事や耳が痛い事もはっきり言ってくれる。でも上手く出来た時はきちんと褒めてくれる。
こう言うのって本当に優しい人じゃないと出来ない事だと私は思う。