第10章 師範と継子 +
「師範。特別稽古なんですけど、是非お願いします」
まだ返事をしていなかった稽古についても私は返答した。
「了解した。ではよろしくな」
そう言って最後の焼き芋を手に取って半分に割ると「ほら」と私に渡してくれた。
お礼を言うと、私は焼き芋を一口食べる。ほくほくしてて、優しい甘さが口いっぱいに広がる。
隣では師範が「わっしょい!!」といつものあの大きすぎる声を出していた。
「わっしょい!!わっしょい!!」
「師範のわっしょいを聞くと、元気が出ます」
「そうか!であれば良かっ……わっしょーい!」
「兄上、七瀬さん、お疲れさまです」
私達が2人で話していると、日輪を思わせる双眸と金色の髪を頭の上で一つに結んでいる、師範そっくりの少年が廊下の奥からやって来た。
違う所は下に垂れ下がった独特の形の眉毛。師範の弟さんの千寿郎くんだ。
「どうした?千寿郎」
「これをお持ちしたんです。小町さんの元に届いたお手紙です」
私は「ありがとう」とお礼を伝え、彼の両方の掌に積まれた束を確認する。
「なかなかに凄い量だな」
「はい、そうですね」
千寿郎くんから手紙を受け取った私は1通1通開封していった。