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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第57章 緋星(あけぼし)喰われしその時に、心炎で天蠍を衝け ✴︎✴︎


「はあ…杏寿郎さんの言う通りだよ……」

朝霧は更に驚く。つい今しがたまで左手を押さえてうずくまっていた七瀬がふらつきながらも立ち上がったからだ。

「何で……どうしてあんたまで平気なの」

「いや、私は平気じゃないよ。まともにあなたの術を受けたからね」
もう一度はあ……と深く息を吐き出した七瀬は、日輪刀を中段に構え直して発言を続ける。


「杏寿郎さんを巻き込んでしまって申し訳ない。最初はその思いだけだった。けど、途中から気づいたの」

「……何をよ」

「嫉妬は杏寿郎さんから距離が1番遠い感情だよ。放たれたとしても届きづらいし、届いた所で効きはしない。だって遠いんだもの」

「遠い……?」

この女は何を言っているのか。朝霧の頭の中が少しずつ、渦のようにぐるぐると周り出す。

「あ、私にとっては嫉妬って1番近い感情だけどね。だからさっき受けた瞬間は本当に辛かったよ」

「あんた……だったら何で立てるの!」

「1番近いって今、言ったでしょ。普段から常に感じててね。その負荷がかかっている状態には私、慣れてるの」

「慣れてる?」
更に混乱する朝霧だ。

「人間は慣れる生き物でもあるの。最初は辛くてもそれが当たり前になってしまうと、順応していくんだよ。心も体も」


「だから、私は大丈夫なの。今度は私が聞いて良い?人が1番力を発揮出来る時ってどんな時かわかる?」

「知らないわよ、そんな物!だって私は鬼だもの!」


「じゃあ、教えてあげる。誰かに信じてもらう事——これだよ。つい先日杏寿郎さんと同じくらい大事な人が言ってくれたの。 “やり遂げようとする事がどんなに困難に思えても、自分を信じてくれる存在がいるのといないのでは大きく違う” って」

「信じる………??」


「そう。信じてもらう事。自分一人だと無理なんじゃないか、難しいんじゃないか。そう思ってしまう時でも、誰かに信じてもらえるとこれ以上ないくらいの力が湧き出てくる」


「そんな事はない、自分はきっと出来る。やり遂げる事が出来るんだってね!...........だから朝霧、私はあなたの頸を必ず切って将門塚に献上するよ」

七瀬が集中力を高めていくと、足元からゆらりゆらりと陽炎が立ち始めた。




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