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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第57章 緋星(あけぼし)喰われしその時に、心炎で天蠍を衝け ✴︎✴︎


やっぱり千寿郎くんは強い人だ。

彼が持って来てくれた麦茶を最後まで飲み干すと、おぼんに置く。あれから雑談を交えて話をしていたのだけど10分程経った時に千寿郎くんが小さくあくびをしたので、また私1人で縁側に座っている。

もうすぐ日付が変わる。
いよいよか……。後もう一回だけ素振りをやったら寝よう。草履を履いて縁側に降りた時、また後ろから声をかけられた。









「帰宅して廊下を歩いていたら、千寿郎と会ってな。君が庭にいると教えてもらったんだ」

「毎回思うんですけど、杏寿郎さんは本当に頃合いが良いんです。いつも絶妙」

「そうか!」

声をかけてくれたのは私が待ち望んでいた人だった。
素振りをして汗をかいてしまった為、一緒に湯浴みをした後は彼の部屋にやって来た。そして布団に隣あって横になっている。


「杏寿郎さんは言わずもがなですけど、千寿郎くんも本当に心が強いですよね。凄く良いなあと思います。私はしょっちゅう落ち込むし、すぐ羨んでしまうので…」

「以前、言っただろう?君は君だ。俺は自分の弱さを認める事が出来るのも強さだと思うぞ」

「認める…ですか?」

ああ、と頷いた彼は私の左頬を撫でた後、おでこに口づけをくれる。

「弱さを認めるのは辛い事かもしれない。けれど今の自分に何が必要か。今の自分に何が足りないか。それらを見つめ直す事が出来る。七瀬はそうやって、新しい型や既存の型の改を編み出して来たのではないか。俺はそう思っている」


「杏寿郎さん……」
ぎゅっ……と目の前の彼を抱きしめた。

「ありがとうございます。私、本当に頑張ります…」

胸に顔を埋め、いつものように杏寿郎さんの心臓に左耳を当てる。
今日も変わらず、規則正しく、一定の鼓動が波打っているそこと自分の呼吸を合わせていくと、気持ちがスウッと落ち着いて眠気に誘われた。

「すみませ……眠くなって……」
「もう休め。俺も寝る」

「はい……おやすみ…なさい…」

“おやすみ、七瀬”と彼が言ったとほぼ同時に瞼を閉じた。

きっと上手くいく。大丈夫。脳内に前向きな表象(=イメージ)を抱きながら、私は恋人の腕の中で寝付いたのであった。


——— 将門塚の再建はもう今日である。

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