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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第57章 緋星(あけぼし)喰われしその時に、心炎で天蠍を衝け ✴︎✴︎


「眠れない……」
布団に入ったのはもう1時間前—だと言うのに、私は明日の事で気持ちがいっぱいになってしまい、落ち着かない状態である。

武者震い半分、残りの半分は不安と言った所だ。

杏寿郎さんは昨日から不在。お館様の所に将門塚再建の最終確認に出向いた後、そのまま任務へと行ってしまった。

“明日の朝までには戻る”
夕方手紙が届いたから、そろそろ帰宅するかもしれない。


よし、また素振りでもしよう!そう決めると布団の中から出て、浴衣から道着に着替え始めた。





「はっー!」
庭に出て来た私は先日と同じように上段、中段、下段それぞれの位置から木刀を振っている。

夜は静かだから虫の鳴き声がよく響くけど、集中もよく出来る。
一通りやり、次は呼吸を使って型の繋がりの素振りをしよう…そう考えていた所に後ろから名前を呼ばれた。

おぼんに1人分の麦茶を乗せている千寿郎くんだった。




「ありがとう。丁度喉が渇き始めてて、冷たい物が欲しいなあって思っていた所だったの」

「良かったです。厠に行った帰りに庭で音がしたから、素振りされているのだろうなあと思って来てみたんです。でも渡しに来ただけなので俺はこれで……」

麦茶を私に渡すと立ち去ろうとした彼に”話がしたい”と声をかけ、留まってもらった。そしておぼんを間に置いて、縁側に2人で腰掛けている。


「ごめんね、引き止めて。どうしても千寿郎くんに聞きたい事があって」
「?俺にですか?」
「うん」

やや驚きの表情をして、大きな双眸を見開いた千寿郎くんに話をしていく。強い心でいれるのはどうして? そんな疑問を彼に投げかけた。

「強い…ですか。あまり自分ではわからないですけど」

「強いよ。槇寿郎さんも言ってたし、間違いないよ。杏寿郎さんも千寿郎くんも心が錆びない人だと思うから、羨ましい」

「錆びない……?」

首を傾げて疑問を私に投げかけてくる彼に、槇寿郎さんにも伝えた”金は錆びない”事を話した。


「それはきっと、俺が七瀬さんの事を信じているのと同じように兄上が自分の事を信じると言って下さったからだと思います。“どんな道を歩んでもお前は立派になる” それから”兄は弟を信じている”…と」




「だから”剣士にはなれない” 俺はその現実を受け入れる事が出来ました」


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