第10章 師範と継子 +
「使うやもしれんな?」
師範は私をみていたずらっぽい笑顔を見せた。
「いや……それだけは勘弁してください……」
半分泣きそうになりながら、訴える。
炎虎までだったらどうにか……いや、炎虎も対応できるか怪しいけど、とにかく煉獄だけはダメだよ。稽古で死にたくない……
「はあ」とため息をつけば、師範がこう言ってくれた。
「以前から思っていたのだが……」
「はい……」
「君は自分を過小評価しすぎではないか?もちろん謙虚であると言うのは良い事だが……」
「そうなんでしょうか」
「ああ」
師範はお茶を一口啜ってこう続ける。
「沢渡、君は2つの呼吸が使えるようになった。
これは本当に凄い事だ。水と炎は対照的。そして心の持ち方、呼吸の出し方が全く違う。使いこなすには努力もだが、技術も必要だ。万人が出来る事ではない」
そこで一旦言葉を切ると、私の顔をグッと覗きこむ。
………ん、いきなり近づくのやめて欲しい。びっくりする……