第57章 緋星(あけぼし)喰われしその時に、心炎で天蠍を衝け ✴︎✴︎
「また君と流星群が観れた」
「はい、今日で2つ目ですね。凄く嬉しいです」
「………」 「………」
沈黙がしばらく続くけれど、とても安心出来る空気だ。
「流星群は他にもあるのか?」
「ええ、大小様々な物がありますよ。今日のペルセウス座流星群を含めた3大流星群が有名です。残り2つはどちらも冬なんですけど……しぶんぎ座流星群とふたご座流星群ですね」
「そうか。であればまた君と観たい」
「ありがとうございます。冬は空気が澄んでて観測には最適ですけど、寒いのが難点です……」
「そうだな。しかしこうする理由付けにはなるぞ」
「え…?」
私の左手から彼の右手が離れた……かと思うと、杏寿郎さんはふわっと包み込むように後ろから抱きしめてくれた。
「すまん、今は暑いな」
「いえ……嬉しいです」
トク、トク……と背中から伝わってくる彼の心音が心地良い。
回っている彼の両腕の上に自分の両手を重ねる。
すると、右耳に彼の唇が当たった。
「あ、まだ言ってませんでしたね」
「何をだ?」
「ご無事のお戻り、何よりです」
「…ただいま、七瀬」
杏寿郎さんの唇が右耳から頬に流れ、私の左頬が包み込まれると、彼からの柔らかい口づけが届いた。
「湯浴み、しますか?」
頷いた彼はもう一度口付けをくれた後、私の両手を持って立ち上がらせる。
「君も来てくれるのだろう?」
はい……と今度は私が頷く。それから彼と手を繋いで浴室に向かったのだった———。