第57章 緋星(あけぼし)喰われしその時に、心炎で天蠍を衝け ✴︎✴︎
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「あ、七瀬さん!今流れたのがそうですか?」
今日は8月13日のお盆。時刻は22時を回った所だ。私は自分の部屋の前の縁側で槇寿郎さん、千寿郎くんと南天の夜空を眺めていた。
「うん、そう。流れ星だよ!あっ、また流れたね」
キラっと点が輝いた……と思う間もなく、流星は瞬く間に斜め下に流れる線になる。そうして夜空に余韻を残しながら溶け込むように消えていった。
「じっくりと観測するのは初めてだ。これは一晩にどれくらい流れるのだろうか」
うーむと顎に手を当てながら、聞いて来るのは槇寿郎さんである。
私がふふっと思い出し笑いをすると、どうした?と彼は疑問を投げかけて来た。
「すみません、やっぱり親子だなあと改めて思って……」
「そうか?」
そうして、去年しし座流星群を杏寿郎さんと観測した時の出来事を話していく。
「今回の流星群は1時間に50個程度流れると言われています。これは極大と言って最も星が流れる場合の個数なんですが、ちょうど今日がそれに当たります」
「通常時は1時間に1つか2つ見えれば良い印象だが…。それはなかなか凄いな」
「はい、そうなんです」
同じような事を杏寿郎さんとも話したなあ……。もう少ししたら帰って来るだろうか……そう考えていた矢先————
「ただいま戻りました」
「あっ…お帰りなさい!」 「お帰り」 「兄上、お帰りなさい!」
左奥から隊服姿の杏寿郎さんが姿を見せる。
「俺と観た時は、1時間に1000個流れる事もある…と君は言っていた気がするが?」
自分の右横に腰を下ろすと、ポンと大きな掌を私の頭に乗せる彼だ。