第57章 緋星(あけぼし)喰われしその時に、心炎で天蠍を衝け ✴︎✴︎

「杏寿郎さん、あの時は特別だったんですよ」
「特別？どう言う事だ？七瀬…」

「俺も興味がある。聞かせてほしい」
「あ、七瀬さん。俺も同じく聞きたいです」

右隣から２つの日輪が、左隣からは4つの日輪が私をじいっと見つめて来た。
何だか私の周りだけ、夜じゃないみたいだ。３人の瞳に根負けした私は了承の返事をして話し始める。

「わかりました…」

しし座流星群の母天体である彗星…と言うのが33年周期で太陽の近くに回帰をしてくるので、その前後数年はしし座流星群の出現数も大きく増大する。

「去年が丁度33年に一度の時期だったんです。次回あんなに流れるのは33年後……いえ、年が変わったから32年後ですね」

「よもや！」
「32年後……俺はいくつだ？」
「俺は……今の父上ぐらいでしょうか！」

感心する杏寿郎さん、将来を案じる槇寿郎さん、あっさりと計算して明るく発言する千寿郎くん…と三者三様の反応を見せる煉獄家の日輪達である。

「だから見れた私達は、とっても運が良かったんですよ」

………あの日、私は杏寿郎さんと結ばれた。一生忘れる事ができない一夜になったと思う。

「いいなあ、俺も見てみたいです。今日の流星群にも胸がいっぱいになっていますけど……自分の名前の数だけ星が流れると言う事にとても感動しました」

この千寿郎くんの言葉にドクン……と心臓が大きく跳ねる。