第56章 山吹のち、姦し(かしまし)ムスメ
「間宮さんに今回の任務の報告をしたら、”さすがは俺の弟子達だな!”って凄く喜んでくれてね」
栞さんの全集中の喋りはどうやらひと段落したと言った所かな。
「”栞も沙希もどうせなら柱を目指せ。柱は良いぞー”って顔を合わす度に言うんです。そんなに簡単になれませんよ…私はいつもそう返してますけど」
なるほど…確かに間宮さんが言いそうだ。
「そうだ、栞さん。柱と言えば…聞きたい事があるんです」
「え?なになに?」
前のめりになる私に、彼女も同じようにずずいっと体を前のめりにするが、沙希の体の位置は——変わらず。
年上2人が熱くなりそうな雰囲気を醸し出しても、彼女は至って冷静。3人集まれば、誰か1人は調整役になる物だ。私達の場合はいつも沙希がその役目を担っている。
「継子はその柱の後継に一応なりますけど。柱になりたいって思います?先日師範の杏寿郎さんに聞かれましたが、私は全く想像出来なくて……」
「え?そうなの?意外ー!七瀬は欠けてた炎の呼吸だって、自分の編み出した型で全て埋めたでしょ。改も3つ思いついているし、絶対柱を目指しているんだと思ってたよ。そうだね、私はね……」
佐伯栞劇場、第二幕開演————
全容は以下の通りである。
栞さんは当初、水柱の冨岡さんの師事を仰いでいた。しかし兄弟子とは稽古と言う稽古が出来ずに、困った彼女は不死川さんに頼み込み継子になった。
“女ァ?しかも風の派生呼吸じゃねェ…”
上記の理由で最初は彼も断っていたらしい…が、栞さんがひたすら毎日来るので風柱はとりあえず相手をする。やはり女はやりにくい…そう感じた彼は”もう来るな”と容赦なく栞さんを倒す。
しかし、栞さんはそれで終わる隊士ではない。
泣きながら何日も何日も、不死川さんに挑んでいった。
この結果、とうとう不死川さんが根負けして”風柱の継子”と言う居場所を手に入れたのだ。