第56章 山吹のち、姦し(かしまし)ムスメ
「すみません、何だかしんみりしちゃいましたね…」
「全然。任務は大変な事ばかりだもん」
「そうですよ、私と栞姉さんが対峙した鬼は異能の鬼だったんですけど……」
沙希が珍しく率先して話し出す。
体が前のめりになっているので、熱くなってしまう任務であった事が予想出来る。
「空間を自由に操作する男の鬼でした。私達の周りに見えない透明な壁を作り出して、全て放った型を無効化されてたんですが…」
「一方向だけだったの。見えない壁が。だから私と沙希で連携して出せる型があるから、それを放って……。隊士になって片手で数えれるぐらいしかやってなかったから少し不安だったんだけど、沙希が完璧に補ってくれてね〜。もう、私任務中なのに感動しちゃって……」
————さて。
栞さんの気持ちが熱くなり、ここから”全集中の喋り”が始まったので、私が代わりに詳細を説明しよう。
栞さんと沙希。霧の呼吸の使い手である2人は、対称になると同時に右と左から同じ技を放つ事が出来る。
その型の名前は「霧の流れ・双双(そうそう)」
霧の呼吸は水の呼吸の派生技である。1番近い水の呼吸の型…に当たるのが、水柱・冨岡さんの得意の型である「打ち潮」
連撃の打ち潮より技のキレは鋭くないが、空気の流れを緩やかにし、太刀筋からふわりと繰り出される軌道が緩やかな霧に変化するようだ。
因みに2人はこの連携技で育手である、元霧柱の間宮飛善(まみやひぜん)さんを吹っ飛ばした事があるらしい。