第56章 山吹のち、姦し(かしまし)ムスメ
そして、2週間後——
「あ〜七瀬ー!!会いたかったあ〜!!」
「わあ、栞さん!どうしたんですか…」
時刻は午後14時半を回った昼下がり。私は甘味処「以心伝心」の暖簾の下にて、先輩と後輩を待っていた。
「もう…栞姉さん、七瀬さんが固まってますよ」
今しがた私を思い切り抱きしめてくれたのは先輩隊士である栞さん。そしてその栞さんの肩を後ろからトントン、と優しく掌を当ててくれたのは後輩隊士の沙希。
「あ、ごめんね……」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
何か報告したい事がある時の栞さんはいつもの明るさが更に増す。
「とりあえず中に入りましょう?」
そうやって扉に手をかけて、店内に促すのは沙希。本当にいつもしっかりしている後輩で、感心してしまう。
「お2人、中期任務お疲れさまでした!無事に怪我なく戻って来て何よりですよ」
4人掛けの座席に座り、そこに置いてあるお品書きを2人にそれぞれ渡した後は自分もお品書きを手に取ってぱらっと開く。
「七瀬さんも、善逸さんと上野で任務だったんですよね。子供ばかり狙っている女鬼でしたっけ?」
「うん、そう。鬼はあっという間に善逸が倒してくれたんだけどさ……」
私はその女鬼について、2人に話をしていく。