第56章 山吹のち、姦し(かしまし)ムスメ
5月10日。これは杏寿郎さんが生まれた日である。
牡羊座から魚座。12個ある星座の内、彼の誕生日は占星術で言う所の牡牛座。
各星座にはその星座を支配する惑星が割り振られているのだけど、彼の場合は私と今一緒に見ている金星がその惑星。
「日の呼吸が12個。その日の呼吸から派生した呼吸が5つ。更にそこから派生した呼吸が7つ。これら全部を合わせると丁度12個になります。日の呼吸の技名は全て太陽を表す名称です」
「うむ、確かにそうだな」
「12星座は黄道12宮とも言われているんですけど……黄道って太陽の見かけ上の通り道なんです。だから12個の星座全てを太陽が一年かけて巡っていきます」
ここで一呼吸置いて、隣にいる彼を見上げる。
「もしかしたら占星術は呼吸に何かしら関係しているのかなあ?と思って、日々あれこれと分析しているんです」
「…君の発想力には本当に驚かされてばかりだ」
ありがとうございます……そうお礼を言いながら、私は彼にぎゅっと抱きついた。
すると、自分の背中に力強い腕がゆっくりと回る。
「明けの明星は”明け星”とも言われます。夜明け前に見える1番明るい星です。夜は鬼が一晩中活動しますが、この星が見えたら朝が近い…だから辛い状況だとしても、あと少しだけ頑張れる目印になるんじゃないかと。私はそんな風に思うんです」