第10章 師範と継子 +
バタン!
再度、右手が打ちつけられた。
「また俺の勝ちか。これで何勝目だ?」
「……ちょうど三百だと思います」
痺れる右手をさすりながら、半泣きになって答える。
「うむ、ちょうどキリが良いな。ではこれから庭に出て再度、地稽古といこう」
私は青くなった。
「え……打ち込みや掛かりでなくて、地稽古なんですか…」
「ああ。その状態で君がどこまで攻めれるか、一度見ておきたい。行くぞ」
師範はそれだけ言うと、スッと立ち上がり庭に向けて歩き出した。
……他の隊士から聞いていた通り、炎柱の稽古は本当に容赦がなかった。
でも。これをやり遂げれば確実に強くなる。そして何よりあの人に少しでも近づきたい。
あの呼吸を私も使えるようになりたい。
私は痺れる右手に一度グッと力を入れ、急いで庭に向かった。
意気揚々と向かったにも関わらず、この後の地稽古では攻め込む隙も全く与えられずに、一瞬で気絶させられた。
意識を取り戻したのはそれから二時間経ってからだった。
気づいたら布団に寝かせられていた私は、慌てて自分の鍛錬をしていた師範の元に向かう。
「師範、申し訳ありません……!もう一度お願いします!」
「うむ、良いだろう!!」
二度目の地稽古開始直後の事だ。
バシッ —— !!
一撃目はかわした私だったが、今度は三撃目で再び気絶してしまった。しかし、今回は十分後に目を覚ます。
「お願いします!」
「では参るぞ!」
——炎の呼吸の道は1日にしてならず——
私は稽古後、涙を流しながら自分が記している記録帳にそう書き込んだ。
師範………強すぎるよ………