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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第54章 霞明ける、八雲起きる



「…でも悔しい気持ち以上に、杏寿郎さんの事は同じ呼吸の使い手としてとても尊敬しているんです。あなたの戦う背中にいつも励まされているし、いつも気持ちを奮い立たされています。これは私以外にも同じように感じている人達、たくさんいると思いますよ」

「ありがとう。君にそう思って貰えて、光栄だ」

私も彼の背中に両手を回すと、更にぎゅっ…と抱きしめてくれる。

『炎柱がさ、こないだこんな事言ってた。”入隊した経緯は皆それぞれだが、背中に背負っている物は全員同じ…鬼を滅する志だ”って』

『俺、本当に尊敬してるんだ』

巧の言葉を思い出す。
この背中にいつもいつも助けて貰ってる……私は彼の背中を労うように撫でた。

「どうした?」
「いつもたくさんの思いを背負っているここを労っているんです」

「そうか」
するとポン、ポンと私の背中も撫でてくれる。
優しく触れる彼の掌に心が少しずつ少しずつ温まる。


その時—— グゥ……と間の抜けた音が私達を包み込んだ。



「…………」
「…………ふっ……」

目の前の大きな体が静かに震えている。

「すみません、安心したらお腹すいちゃいました……さっきカステラは長友さんから頂いたんですけど……」

「いや、構わない。俺もまだ食べている途中だった。行こう」
彼の体が私から離れると、ほんの少しだけ寂しさを感じる。

「俺も君と同じ思いだぞ」
「え?」

見上げれば、彼からの口付けが1つ降って来た。

“まだ君を離したくない”



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